- 著者
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別府 哲
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.128-137, 1996-12-20
- 被引用文献数
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本研究の目的は, ジョイントアテンション行動としでの後方向の指さし理解における, 自閉症児の障害を検討することである。その際, 指さしと言う行動が, 指さすものと指さされるものの関係の理解を必要とする行動であり, しかも対象を相手と共有する目的で行う行動でもあるという, 2つの能力を必要とする行動と捉える。前者の能力を調べるため, 後方向の指さし理解課題を用い, 後者の被験者が対象を相手と共有したい要求をもてる文脈を形成するために, 自閉症児も興味をもちやすいシャボン玉を指さしの対象とした。実験は, 5カ月から1歳8カ月迄の健常乳児53名, 実験では就学前の通園施設に通う自閉症鬼23名を, 各々被験者として行い, 比較検討した。その結果, (1)自閉症児も健常乳児と同様, 一定の発達年齢(1歳1カ月)以上では, 後方向の指さし理解が可能となること, (2)しかし健常乳児では同時期に, 後方向の指さしに振り返った後, 指さしや発声を伴って再び大人を見て注意を共有したことを確認する共有確認行動が半数近くの被験者に出現するのに対し, 自閉症児ではそれがほとんどみられない, という特徴が示された。自閉症児が, ジョイントアテンション行動としての指さし理解に障害を持つという結果を, 他者認識との関連で考察した。