著者
角南 祐子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.313-321, 1992-12-01

胸部エックス線写真の大動脈弓部石灰化所見は,一般に動脈硬化の指標として広く認められている。そこで今回大動脈弓部石灰化の年齢別変化を調べ,かつ今後の検診の参考にするため,住民検診時の間接写真を利用して大動脈弓部石灰化の年齢別分布,性差,地域差について検討した。さらに動脈硬化の諸要因と石灰化との関係も調べた。大動脈弓部石灰化出現率(以下石灰化率)は年齢とともに高率となり,高齢者では男性に比し女性の石灰化率が高かった。男女の石灰化出現のオッズ比(相対危険度)を算出すると,男性の女性に対する石灰化出現の危険性は有意に低かった。地域別に石灰化率をみると,農村部で最も高率で,漁村部,都市部の順に低率となり,その差は高齢者ほど顕著であった。動脈硬化の危険因子のうち,高コレステロール血症群,拡張期血圧高値群,喫煙群の三因子正常群に対する石灰化出現のオッズ比を性年齢別に算出したところ,女性では危険因子を有する群で有意に石灰化出現の危険性が高かった。石灰化の危険因子が単一の場合に比し,重複するとさらに石灰化出現の危険性が高くなる傾向が認められた。地域別に高血圧性疾患,虚血性心疾患,脳出血,脳梗塞等の動脈硬化性疾患の訂正死亡率をみると,都市部では他の地域に比し石灰化率と同様死亡率が低く,これらの関連が示唆された。石灰化出現は,大動脈系の内膜変化および動脈硬化性疾患の存在を示唆する所見であり,集団検診より診断できる所見として重要と考えられた。

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CiNii 論文 -  住民検診結果に基づく大動脈弓部石灰化の検討 http://t.co/VS432IpNfN #臨床医学 #CiNii

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