- 著者
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開發 孝次郎
- 出版者
- 日本大学
- 雑誌
- 日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, pp.A111-A128, 1999-03-15
一九八〇年に入りいわゆるリビジョニストと呼ばれる人々により日本の社会経済システムは異質、特殊であり、世界の社会経済の仲間でいるためにはグローバルスタンダードなるものに合わせなければならないとする主調がなされ始めました。それに対して、経済システムはその国の文化、国民性に基づいているものであり、異質ではなく、違いがあるだけであるとの反論があります。本論では日本の企業に焦点を合わせて、「異質性、特殊性」を考察します。日本の企業には確かに終身雇用、年功序列、平等主義、業界団体、メインバンク制、系列、企業別労働組合、間接金融、官僚裁量主導型などの特徴がありますが、これらすべてが日本の企業に固有のものであり、特殊であると言うことではありません。他の国の企業にも程度の差こそあれ存在しています。それぞれに歴史的背景、社会経済的背景、メリット、デメリットがあります。企業はそれが存在する社会の文化から独立した存在ではなく、それを反映している存在です。日本経済はキャッチアップの時代を終了し、これからは確かな目標がない道を進むために適した社会経済制度に移行して行かなければなりません。それと同時に企業のあり方も変わっていかなければならないでしょう。