著者
安渓 遊地
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学國際文化學部紀要 (ISSN:13427148)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A1-A9, 2006-03-07

ある日本の島で出会った女性は,「もし人が救われるなら,学問で救われる。人が滅びるならば,学問で滅びる」という知恵の言葉を,島の高齢者から教わって育った。そして,民俗や植物についての知識に興味をもつ少女となったあと,島を訪れるさまざまな研究者と接することになるが,その中で,お手本とすべき人はごく少数であった。彼女の記憶に残るのは,資料を借りて返さぬ人,島びとの研究の成果を自分のもののように発表する教授など,島びとを人間としてあつかわないおごりに満ちた姿だった。こうした悲しみの語りを教材として,いかにしてフィールドワークにおける研究という営みをめぐる問題点を乗り越えることができるのか,それを学生たちとともに考えてみたい。

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