- 著者
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渋谷 勝己
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.3, pp.32-46, 2005-07-01
本稿では、日本語の可能形式の文法化のありかたについて、他の言語の場合も参照しつつ、その特徴を総合的に整理することを目的とする。分析によって、以下の点を明らかにする。(a)可能形式の起源となった形式には、完遂形式と自発形式がある。いずれも他の言語と共通するが、自発形式の種類が多様である点に日本語の特徴がある(第3節)。(b)日本語可能表現の内部では、状況可能>能力可能>心情可能といった変化の方向が観察され、通言語的に指摘されている能力>状況といった方向とは異なっている(第4節)。(c)日本語の可能形式は、さらに、行為指示形式や生起可能性を表すモダリティ形式に変化する場合があるが、前者はおもに禁止表現に、後者はわずかな形式に観察されるだけである(第5節)。まとめれば、日本語の可能形式の文法化は、可能形式以外の表現領域から可能形式化し、可能表現内部でさらに意味変化を起こすことはよくあるが、ときに禁止表現化する以外には可能形式の段階にとどまったまま、次の新たな可能形式に道を譲るといったケースが多い。