- 著者
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森 康司
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 人間科学共生社会学 (ISSN:13462717)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.47-61, 2002-02-15
本稿は,大学運動部貝のジェンダー観と,スポーツ価値意識との関係に焦点を当てている。最終的な目標は,大学運動部にみられる諸特性や,大学運動部員のスポーツに関する価値意識が,どの程度大学運動部員の社会生活の諸領域にわたる意識にまで反映されているのか,という点を明確にすることであり,本稿ではその足がかりとして,ジェンダー観に注目する。大学運動部の特徴や日本人のスポーツ価値意識については,これまで様々な指摘がなされてきたが,現在では大学運動部も時代の趨勢にしたがって多様化しているとされ,以前指摘されてきた特徴にも表面上には変化が生じてきている。様々な変化が生じている現在であるからこそ,運動部については,従来とはまた異なる視点からの研究が必要とされている。「学校運動部は男性の性差別的な意識を培養する」という指摘についても,再検討が必要だろう。一大学を対象とした調査研究の結果,男性部員の性差別的な意識と,女性部員の性差別的慣行への容認的な態度は,彼・彼女たちのスポーツ価値意識と密接に関係していることが推論できる。