- 著者
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岡崎 友子
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.2, pp.77-92, 2006-04-01
現代語のソ系(サ系列)の指示詞には対話現場に対象も,先行文脈に先行詞もない用法がある。これらはソ系の曖昧指示表現・否定対極表現であり,ソ系(列)・サ系列がそもそも持っていた中心的な用法であることを,心的領域を用いて指摘した。これについてはまず,現代語の感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現は,照応用法と同様に,談話情報領域内の要素を対象とする指示であること,また,古代語(上代・中古)では照応用法・観念用法と連続する,今,現在目に見えない,感覚できない対象の指示であったことを明らかとした。そして,歴史的な変化の中でソ・サ系列は観念用法を失い,曖昧指示表現も次第に衰退していった(感動詞も「ソウ」に偏っていく)。そのため,感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現と,照応用法のつながりが感じられにくくなり,例外的・周辺的なものと考えられるようになったことを指摘した。