著者
岡崎 友子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.77-92, 2006-04-01

現代語のソ系(サ系列)の指示詞には対話現場に対象も,先行文脈に先行詞もない用法がある。これらはソ系の曖昧指示表現・否定対極表現であり,ソ系(列)・サ系列がそもそも持っていた中心的な用法であることを,心的領域を用いて指摘した。これについてはまず,現代語の感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現は,照応用法と同様に,談話情報領域内の要素を対象とする指示であること,また,古代語(上代・中古)では照応用法・観念用法と連続する,今,現在目に見えない,感覚できない対象の指示であったことを明らかとした。そして,歴史的な変化の中でソ・サ系列は観念用法を失い,曖昧指示表現も次第に衰退していった(感動詞も「ソウ」に偏っていく)。そのため,感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現と,照応用法のつながりが感じられにくくなり,例外的・周辺的なものと考えられるようになったことを指摘した。
著者
堤 良一 岡崎 友子 藤本 真理子 長谷川 哲子 松丸 真大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、現代日本語の指示詞の現場指示の方言差を明らかにするとともに、各方言が採用する空間認知の分割方法と、それと連関するような文法現象を見極めることで、日本語の指示詞の現場指示の使用のされ方と、その他の言語現象との関わりを探ろうとするものである。今年度は、次年度以降に実施予定である本格的な実験に向けて、実験のデザインを行った。そして、そのデザインの妥当性を検討するために徳山大学(山口)、尾道市立大学(広島)、愛媛大学(愛媛)の3大学で実験を行った。収集したデータは方言帯ごとにグルーピングし、それぞれの差を見ることとなる。具体的な傾向としては、研究代表者と研究分担者(岡﨑友子氏)が、岡山方言について言及したことがあるように、話し手と聞き手との間程度の距離の対象についてアノで指示する話者が一定数存在し、それは瀬戸内海沿岸の地域の出身者に多いような傾向が見て取れる。しかしこれは今後継続的な実験を続け、データの数をある程度取らなければ断定的なことは言えないというような状況である。実際に実験を行いながら、実験の妥当性、公平性他、様々な点で問題点が見つかったが、その都度微調整を行いながらデータ収集を行った。現段階では、次年度に向けて均等な環境での実験が遂行できる準備が整いつつあると考えている。収集したデータについて、統計的な処理を施すことができるかどうかについて、平成30年3月24日(土)、東洋大学岡﨑友子(共同研究者)研究室にて、検討会を行った。統計学の専門家である小林雄一郎氏から有益なコメントをもらい、データベースの作り方等を今後さらにつめていく必要があることを確認した。
著者
蜂矢 真郷 金水 敏 岡島 昭浩 岡崎 友子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、近世から近代にかけての資料を中心に、「口語性」と不連続・不整合を見せる語彙、ないし形態を積極的にとりあげ、その由来・発展の過程を明らかとした。概要を以下に記す。(1)北原白秋・長塚節などが、歌や詩で使う語には様々な背景がある。そこで、古語を復活させたり、口語を古語めかしたりする手法を明らかにし、そこから言語意識を伺うことが出来た。「すがし」「かあゆし」「すゆし」「たゆたし」などの語の考証を行ったが、詳しくは、研究成果報告書に記してある。(2)明治からの、ピジン日本語に関わる資料や、ピジン日本語らしきものを使用した文献をいくらか集めることができた。田舎者言葉とされる「あるだよ」は、江戸・東京以外の関東方言の言い方を土台にしているが、これが外国語からの翻訳にも使われているものを、大正時代から見いだすことが出来た。(3)脚本類からの調査も行った。大正時代の『近代劇大系』(外国の脚本を翻訳したもの)を中心に用例を拾った。これは継続して調査・整理中であり、研究成果報告書には、一部しか反映できなかった。なお、この科研費による研究の成果ならびにこれに関する諸情報は、ホームページ(http://www.let.osaka-u.ac.jp/jealit/kokugo/fuseigo/)に示しており、今後も増補を続ける予定である。
著者
岡崎 友子 堤 良一 金 善美 金水 敏
出版者
就実大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

現代語の指示代名詞の研究については、これまで多くの成果が出ているが、フィラーや古代語の指示詞については未だ分からないことが多い。そこで本研究では、様々な分野の研究者が連携し、古代・現代語の指示詞の用法について調査・分析を行い、その用法を究明した。さらに研究期間中に収集・整理した古代語の指示詞の用例や、TV番組におけるフィラーについて、公開のためにデータベース化をおこない、指示詞用例集として刊行した。