- 著者
-
江頭 洋祐
- 出版者
- 一般社団法人日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.4, pp.283-289, 2007-04-01
東洋医学/漢方診療は検査技術のない時代に中国や日本で発達した医療体系である.そこでは患者との対話を中心として診療方針が決定されていた.最近,現代医学のあまりにも自然科学的なEBM(evidence based medicine)への偏りに対して改めてNBM(narrative based medicine: ナラティブ・アプローチ)の重要性が提唱されている.昔の中国医学の古典(素問,他)を検討してみると,NBMとしての診療記録が数多く発見される.具体的には素問にある移精変気法の記述や,戦国時代の名医文摯が斎の国王を怒らせて治癒せしめたとの記録などがある.日本でも江戸時代後期の和田東郭や,現代の漢方のエキスパートである大塚敬節らも,NBMとしての診療を実践しているいくつかの診療録がある.この研究を通じて,東洋医学/漢方診療こそ昔からNBM的アプローチによって心身医学的診療を実践していたことが確認できた.