- 著者
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村上 謙
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.17-32, 2006-10-01
本稿では近世前期上方で生じた状態性を有する尊敬語表現「テ+指定辞」(ex.聞いてじゃ)の成立過程について論じる。これについてはこれまで、省略説、体言化説、状態化説、「ての事だ」の関与説、の四説が論じられているがいずれも採るべきではなく、本稿ではこれらに代わるものとして、「テゴザルからの変化」説を提出する。この説は、状態性を有する尊敬語表現形式テゴザルのゴザル部分をジャなどで代用することで新形態「テ+指定辞」が出現したと考えるものである。このように考えれば、「テ+指定辞」が敬意を有する語を含まない尊敬語表現であった事、近世前期に生じた事、状態性表現であった事を有機的に関連づけて説明できる。