- 著者
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影浦 峡
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.47-60, 2006-10
本論文では、専門語彙の体系における外来語語基の集合としての位置づけを、計量的な観点から分析する。専門語彙における外来語語基の位置づけについては、個々の外来語が漢語・和語と異なる存在であることを前提として様々な分析がなされてきた。しかしながら、語彙体系の構成において、使用頻度として、外来語語基の集合が、それ以外の語基の集合と異なる位置づけにあることは確実に検証されているものの、外来語語基とそれ以外の語基とが使われたとき、その使われ方が質的に異なるかどうかは検証されていない。本論文では、外来語語基とそれ以外の語基は同じ語基集合に属するものとして語彙の体系を構成しており、たまたま外来語語基が表層的特徴において目に付くためにそれだけを取り出して分析すると使用の度合いが全体として少ないことが観察されるだけなのか、それとも仮に同程度に用いられると考えても外来語語基集合は質的にそれ以外の語基集合と異なるのかを、データに基づいて検証する。農学、植物学、化学、物理学、情報科学、心理学の6分野の学術用語を対象に分析した結果、いずれの分野でも、語基が語彙に最初に取り込まれる状況では外来語は質的に異なった振舞いをするが、いったん語彙に取り込まれた外来語の振舞いには質的な特異性が見られないことがわかった。