- 著者
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下地 賀代子
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.76-91, 2006-10
多良間島方言のsi: ukiという形式は,〈動作・変化の完了とその変化の結果の継続〉,〈動きの完了とその痕跡〉,〈経歴・記録〉というパーフェクト的な意味を表すための形式である。継続相のsi: buLもパーフェクト的な意味を表すことができるのだが,〈パーフェクト〉のsi: buLには,上の3つのパーフェクト的な意味の他,〈動作の開始とその過程の継続〉の意味を表す用法も見られた。これは,両者の「中核的な時間的意味」が異なっていることの現れである。そして,si: buLが,パーフェクト的な意味を実現している場合においても〈継続性〉という中核的な時間的意味が取り出されるのに対し,si: ukiは,その形式が表わす文法的意味は常に基準時点以前のデキゴトの完了の段階を捉えるものであることから,その中核的な時間的意味として〈完了・以前性〉が取り出されることを示した。