著者
入江 貴博
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.55-63, 2007-03-31
被引用文献数
3

寒冷な生息地(高緯度・高地)ほど成体サイズのより大きな個体が見出される種内地理的パターンはベルクマン・クラインと呼ばれ、分類群を越えて動物界に広く知られているが、その近接・究極要因は分類群によって異なる。野外においては、しばしば複数の環境要因が体サイズとともに共変動を示すことが、その原因となる環境勾配の特定を難しくする。また、環境要因は体サイズそのものに直接の影響を与えるとは限らず、成長率や成長期間といった他の生活史形質に影響することで、体サイズを間接的に支配する場合もある。従って、体サイズ・クラインの原因となっている環境勾配を明らかにするためには、体サイズ以外の形質を含めた生活史形質と環境の勾配に関する野外データの収集に加え、飼育個体を用いた環境操作実験によって近接要因を特定する必要がある。また、生活史理論に基づく数理モデルを用いた最適生活史の推定は、究極要因の特定にきわめて有効な手法である。ベルクマン・クラインの成立には、集団間の遺伝的変異が介在する場合が少なくないが、一方で体サイズやその他の生活史形質における表現型可塑性も同様に重要である。従って本稿の後半では、ベルクマン・クラインの近接要因であると特定または推定される個別の環境要因ごとに、それらが体サイズに関する遺伝的分化や表現型可塑性にどのような影響を及ぼしているかについて、特に外温動物に関する研究例を紹介する。

言及状況

Wikipedia (1 pages, 2 posts, 2 contributors)

編集者: Trca
2019-05-24 16:06:48 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

収集済み URL リスト