- 著者
-
井上 健一
西尾 隆
- 出版者
- 一般社団法人日本土壌肥料学会
- 雑誌
- 日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.6, pp.659-665, 2006-12-05
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
-
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有機質資材施用下の畑地の窒素収支を把握するためには,脱窒の定量的な予測手法の開発が不可欠である.そこで,土壌の種類,水分,かさ密度の違い,有機物添加の有無およびそれら要因の複合的な作用が土壌の脱窒速度に及ぼす影響を室内モデル試験によって調査し,未攪乱土壌法による圃場での層位別脱窒速度の実測結果と合わせて検討した.1)淡色黒ボク土,灰色低地土の両土壌とも土壌含水率と仮比重の増加とともに脱窒速度が増加したが,特に速度が著しく増加する境界域が存在した.乾燥豚ぷんの施用で脱窒速度は大きく増加したが,境界域の値は無添加に比べ1低下した.2)脱窒速度を圃場条件下で実測した結果,7月9日の乾燥豚ぷん区の脱窒速度は化学肥料区に比べ高く,しかも,10〜20cm,20〜30cm層位において0〜10cm層位を上回る結果となった.3)7月8日に採取した土壌の脱窒酵素活性と二酸化炭素発生速度の間には高い相関関係が認められた.4)以上の結果より,畑土壌の気相率を基に脱窒を推定する簡易予測手法について検討した.その結果,土壌の違いと施用有機物の有無で分けて気相率と脱窒速度の関係をみると,両者の間にそれぞれ負の相関関係がみられた.得られた回帰直線の係数は土壌と有機物の二要因の影響を強く受けていることが推察されることから,脱窒速度の推定には,この関係を考慮することが必要と考えられた.