著者
佐藤 郡衛
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.215-225, 2007-06
被引用文献数
1

本稿の目的は、国際理解教育論と実践の関連の分析を通してそこに内在する問題を明らかにし、今後の実践を進めるための基本的視点を提示することである。国際教育理解の問題として第1に理論と実践に乖離があることを指摘できる。第2に多様な理論が教育現場に入り込んだ結果、海外・帰国児童生徒、外国人児童生徒といった対象別の実践、異文化理解・環境・平和といった領域別の実践、さらにコミュニケーション力、表現力といった資質に注目した実践が混在するという問題を抱えている。第3は実践では個人的資質の育成のみを強調してきたという問題がある。課題として、多様な実践を一定の枠組みで整理し、しかも実践の視点を明確にしていくこと、個人的資質を育成するカリキュラム論や学習論を明確にすることを指摘した。今後、国際理解教育は、多元的アイデンティティの形成、批判的思考力、相互的な知、参与的な知の育成を目指す必要があることを示した。

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