著者
榊 美知子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.184-196, 2007-06-30

本研究では,手がかりイベント法(event-cueing technique)を利用し,(1)自伝的記憶がどのように構造化されているのか,(2)自伝的記憶の感情情報がどのように保持されているかに関して検討を行った。46名の大学生に手がかり語を8語呈示し,関連する自伝的記憶を1つずつ想起させた後(cueing events;手がかりイベント),各手がかりイベントに関連する自伝的記憶(cued events;想起イベント)を2つずつ想起するよう求めた。その結果,(1)想起イベントと手がかりイベントは高い時間的近接性を持っていること,(2)想起イベントを思い出す際に,手がかりイベントと同じテーマに関する記憶が想起されやすいことが示され,自伝的記憶がテーマごとに領域に分かれた構造を持つことが明らかになった。更に,自伝的記憶の領域と感情の関連について階層線形モデルによる分析を行ったところ,領域ごとに異なる感情状態と関連していることが明らかになった。このことから,自伝的記憶と感情の関連や,自伝的記憶による感情制御を検討する際に,自伝的記憶の領域構造を考慮する必要があることが示唆された。

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