著者
本間 靖夫
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-30, 2006-09-30

本稿は1956年(昭和31年),当時の日本火災海上保険株式会社がひきおこした架空契約事件,いわゆるテーブル・ファイア事件(机上火災事件)の顛末とそれがもたらしたものについての事例分析を通して,損害保険会社の公共的性格と社会的責任を検討したものである。ここでは事件をできるだけ事実に則して具体的に多面的に示すこと,また本来の補償機能とともに金融仲介機能や貯蓄機能を併せもつようになった金融機関としての損害保険会社と銀行の公共的性格と社会的責任を,業務と経営,ならびに法的側面から比較検討することを心がけた。ここでいうテーブル・ファイア(机上火災)とは,損害保険会社の代理店に対する規定を超える手数料支払いの財源を確保するため,帳簿上で架空の火災保険契約が罹災したことにして資金を捻出する方法をいう。この事件を契機に損害保険業界は戦後の混乱期を脱して,高度成長期の損害保険事業の正常化と健全な発展に資する1つの革新をなしとげ,秩序ある市場構造が確立したと評価することができる。本稿の事例分析は,経済環境の変化に伴い現在,金融機関のみならず一般の企業の公共性と社会的責任のあり方を検討する広範な課題のための素材を提供するものともなる。本稿の構成は以下のとおりである。はじめに 1.損害保険の仕組みと損害保険事業の法制 2.戦後損害保険事業の発展と正常化 3.「日本火災事件」の経過 4.事件の結果と争点 5.事件をもたらしたものと事件の意味 むすびに代えて一銀行の公共的性格との比較

言及状況

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@o2441 損保業界でも昔同じようなことがあって、机の上で火事を起こしてしまいました。http://t.co/6Pn1n4sS この事件を契機に、「秩序ある市場構造が確立した」と言われていますので、検察もぜひ!!

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