著者
道下 雄大 山口 裕文
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科学術報告 (ISSN:18816789)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.13-37, 2006
被引用文献数
1

民家庭園など人の身近な場には,遺伝資源または文化遺産として重要なさまざまな維管束植物が生育している。これらの植物の多様性を体系的に知るために,2005年の春と秋に長崎県平戸市の2集落と松浦市の2集落において庭園に生育する維管束植物を調査し,その利用法と導入経緯を聞き取り調査した。確認された161科868種の植物について,確認した戸数,常在度,鉢植えの実態(鉢比率),利用法をまとめた。有用植物では,ナンテン,イヌマキ,ヒラドツツジ,ツワブキ,ツバキ,マンリョウ,シンビジュームの順で常在度が高く,雑草ではカタバミ,オニタビラコ,ムラサキカタバミ,メヒシバ,ツユクサ,キツネノマゴ,コミカンソウ,ツメクサの順に常在度が高かった。651種の植物は,観賞用,垣根,食用,薬用,儀礼用,工芸用などにされていた。有用植物の約8割は観賞用で,花や葉や果実が観賞対象とされ,盆栽や忍玉としても利用されていた。国外産多肉植物は鉢植えとされる傾向が高く,シンビジューム,フチベンベンケイ,クンシラン,クジャクサボテンの順で鉢比率が高かった。40科58種では地方名を記録した。調査対象地の民家庭園の植物は,観賞植物を中心として高い多様性を示した。

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