- 著者
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浜中 真志
- 出版者
- 素粒子論グループ 素粒子研究編集部
- 雑誌
- 素粒子論研究 (ISSN:03711838)
- 巻号頁・発行日
- vol.106, no.1, pp.1-60, 2002-10-20
- 被引用文献数
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Atiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin (ADHM)構成法とは,任意のインスタントン解を与える強力な構成法の一つである.この構成法はNahmによってモノポール解の構成に応用された.これをADHMN構成法あるいはNahm構成法と呼ぶ. (両者をまとめて,この記事ではADHM/Nahm構成法と書く.) ADHM/Nahm構成法は,インスタントン/モノポールのモジュライ空間とADHM/Nahmデータのモジュライ空間との1対1対応(双対性)を利用したもので,様々な応用がある.この記事ではまず可換空間上のADHM/Nahm構成法の詳細について一通り述べ,背後に潜む双対性を明らかにする.そしてその双対性の起源を, 4次元トーラス上のゲージ理論を用いた議論(Nahm変換),およびある配置に置かれたD-brane複合系のゲージ理論を用いた議論から考察する.このD-brane解釈により,数学的な概念だと思われていたADHM/Nahm構成法に物理的意味が与えられ,逆にADHM/Nahm構成法の中にMyers効果, Solution Generating TechniqueといったD-brane力学解明へのヒントが隠されていることが明らかとなった.さらに非可換空間上のゲージ理論とADHM/Nahm構成法についても簡単に紹介する.非可換空間上のゲージ理論は背景B場(磁場)中のD-brane上のゲージ理論と等価であることが知られているが, ADHM/Nahm構成法を用いると,それが顕著に見て取れる.この記事はADHM/Nahm構成法の,物理の人向けの包括的解説である.