著者
三橋 正
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.333-358, 2007-09-30

神仏習合と神仏隔離(分離)が併存するという日本特有のシンクレティズム現象は、古代国家が仏教を受容してから神祇祭祀を形成させたことで生まれた。仏教公伝の記事に欽明天皇が仏像を蘇我稲目に託したとあることは、古墳時代に普遍的な委託祭祀の方式に則ったものである。また古墳で行なわれていた「柱」祭祀に、神聖(祭祀的)な面と服属儀礼的な面とがあり、仏教の受容に際し、神聖(祭祀的)な面は塔の心柱に、服属儀礼的な面は須弥山を建てる儀に投影された。仏教は当初、古墳時代の祭祀形態をふまえ、それと混淆して受容された。それに対し、律令国家の建設と一体化して形成された神祇祭祀には、「柱」の抽象化が見られ、古墳祭祀からの断続があったと想定される。神祇は、古墳祭祀の衰退・消滅と、一時的な仏教儀礼への移行がなされた後で、仏教から自立する形で古代国家によって創始された。これによって仏教を信仰しながらも神の優位性を認めようとする精神構造(信仰構造)が出来上がったと考えられる。

言及状況

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3年前にお亡くなりになった三橋正「仏教受容と神祇信仰の形成 : 神仏習合の源流」を読む。父が三橋一也ということもあるのか、柱をテーマに建築・空間への関心が垣間見える論文。https://t.co/81YsC4x3jk

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