著者
桃原 一彦
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学社会文化研究 (ISSN:13426435)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-29, 2007-03-31

本稿は、沖縄の米軍基地周辺市街地におけるインナーエリアの空洞化から都市下層の問題を呈示し、「二極化」の動向を分析していくことを目的とする。ただし、たんなる「インナーエリアー郊外」という都市社会学の一般的な空間構成の図式で読み解くのではなく、米軍基地を抱える沖縄の社会構造の特質と絡めて問題点を明らかにする。米軍基地周辺市街地のインナーエリア問題に関しては、沖縄市の旧コザ市管内を高齢化率、失業率、生活保護世帯率などの既存統計資料から空洞化の動向を紹介し、いったん都市下層の問題を一般的な指標で提示しておきたい。さらに、米軍基地の問題と深く関連する沖縄社会および沖縄の都市社会の構造の特質を見出すために、嘉手納弾薬庫を「不法」に占拠して400余の店舗群を構築した白川フリーマーケットを手がかりに都市下層の様相を記述しておく。そこに垣間見えてくるのは、圧倒的な暴力主体としてのアメリカ軍、それを優遇し正当化する日本の国家権力、そしてこの両者から私的利権を欲望させられる軍用地主によって強力に規定される、基地周辺の都市空間と都市下層の特殊性である。そこには「黙認」という都市行政の儀礼的態度も複雑に関連している。

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