著者
岩波 悠紀 佐藤 庚
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.168-177, 1970
被引用文献数
1

ヨード染色および化学分析法により,ススキ体内の炭水化物(全糖・澱粉)の分布およびその季節的消長を火入れとの関係において調査した。1.越冬直後の地下茎は多量の澱粉粒を含有し,この場合形成年次の古い地下茎ほどその量が多く,また澱粉粒の大きさは大きかった。2.地下茎内炭水化物は地上部の伸長に伴ない,形成の新しい部位から順次消費され,6月の節間伸長開始期に最低となった。その時期には約3年前に形成された地下茎内に僅かに澱粉粒を認めたが,その他の部位にはほとんど存在しなかった。同時に地上茎内の炭水化物の蓄積も最低であった。3.その後再び蓄積の過程に転じ,地下部は10月末から11月には最高に達した。蓄積の過程では,消費の場合とは逆に形成の古い部位ほど早くから蓄積しまた量が多かった。4.地上茎については,主としてその中・下部に澱粉が蓄積され,出穂完了後にその量は最高に達した。それらは葉身が枯れる時期に急速に地下部へ移行した。5.火入れ時期が早い区では,体内炭水化物の季節的消長はU区とほぼ同様に経過した。しかし火入れ時期が遅い区では,地上器官の枯死に伴ない,地下部に蓄積した炭水化物を急速に消費し,再生および炭水化物の蓄積が遅れた。6.6月の地下茎内炭水化物がほぼ最低になる時期に火入れした場合でも,晩秋には体内炭水化物含有率はU区とほぼ同じレベルに回復した。

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