著者
岩波 悠紀
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.135-143, 1972-10-25 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

1.各草地の火入れ温度観測実験例における延焼速度は0.2-8m/min程度であった。2.シバ型,ススキ型およびササ型草地の地面附近の気温は,温度上昇が始まってからそれぞれ約15-30sec,20-60secおよび0.5-1.5minで最高温度に達し,その温度変化はそれぞれ約2-5,3-7および4-10min間続いた。3.風速が比較的速い場合の向風延焼では,測温位置が低くなるほど最高温度に達する時刻は早くなった。一方,追風延焼では逆に測温位置が高くなるほど,最高温度は早く出現した。また火入れの最中に絶えず風向,風速が変る場合には,温度変化曲線に幾つもの山が現れた。4.最高温度の垂直分布は,ススキ型草地の枯草が地面に倒れている場合およびシバ型草地では押倒し型を,ススキ型草地で枯草が立枯れている場合には立枯れ型を示した。ササ型草地では立茎の燃え具合によって,押倒し型または立枯れ型を示した。5.燃えた燃料の量が1m^2当り約500gまでは,その量が増すにつれ最高温度は上昇しほぼ600-800℃に達した。しかしそれ以上では,燃えた燃料が多くなっても最高温度は横這い状態であった。一方,高温持続時間は燃えた燃料の増加に伴い上昇した。6.向風延焼は追風延焼に比較して,延焼速度が遅いために,最高温度は多少低いが,高温持続時間は長くなった。燃料の含水率が高い場合の火入れは,最高温度が低く,高温持続時間も比較的短くなった。
著者
岩波 悠紀 佐藤 庚
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.168-177, 1970
被引用文献数
1

ヨード染色および化学分析法により,ススキ体内の炭水化物(全糖・澱粉)の分布およびその季節的消長を火入れとの関係において調査した。1.越冬直後の地下茎は多量の澱粉粒を含有し,この場合形成年次の古い地下茎ほどその量が多く,また澱粉粒の大きさは大きかった。2.地下茎内炭水化物は地上部の伸長に伴ない,形成の新しい部位から順次消費され,6月の節間伸長開始期に最低となった。その時期には約3年前に形成された地下茎内に僅かに澱粉粒を認めたが,その他の部位にはほとんど存在しなかった。同時に地上茎内の炭水化物の蓄積も最低であった。3.その後再び蓄積の過程に転じ,地下部は10月末から11月には最高に達した。蓄積の過程では,消費の場合とは逆に形成の古い部位ほど早くから蓄積しまた量が多かった。4.地上茎については,主としてその中・下部に澱粉が蓄積され,出穂完了後にその量は最高に達した。それらは葉身が枯れる時期に急速に地下部へ移行した。5.火入れ時期が早い区では,体内炭水化物の季節的消長はU区とほぼ同様に経過した。しかし火入れ時期が遅い区では,地上器官の枯死に伴ない,地下部に蓄積した炭水化物を急速に消費し,再生および炭水化物の蓄積が遅れた。6.6月の地下茎内炭水化物がほぼ最低になる時期に火入れした場合でも,晩秋には体内炭水化物含有率はU区とほぼ同じレベルに回復した。