- 著者
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伊藤 太郎
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.2, pp.223-231, 1960-12-25
Homothallic種Sordaria fimicolaの天然分離の集塊胞子培養によって得られた子実体に形成された子のう胞子中に,4種の色調差を有するものが4種の分離型(同質接合体型 異質接合体型(2種)不規則型)に従って配列形成されていた。色調形質因子の発現作用考究のためには,先ず同因子の数及び因子構成が調査されねばならないが,本研究では自家和合系形質発現作用考究の一部として,子のう胞子の分離を四分子分析法によって調査した。その結果として,異質接合体型中,後還元的分離を示したものは50ないし63%で,OLIVE氏の人為然変異型間の交配により現出された濃淡色子のう胞子の分離頻度に略一致することが明ちかになった。これは更に不規則型分離型の子のうにおいても適用されると見なした。これはその第一次から第三次の核分裂で同形質発現因子に異常を来たし,その作用が不活性化されるか遅滞するために形成子のう胞子に淡色のものが生じたと見なした。即ち濃淡色子のう胞子配列により,第一次核分裂において生じた単一核に,第二次又は第三次分裂に際して遅滞がおきたと見なされるもの(第一群分離型),第一次分裂に続いて,第二次分裂及び第三次分裂に遅滞がおきたもの(第二群分離型),更に第二次及び第三次分離に遅滞がおきたもの(第三群分離型)として,その始発分裂時期によって第一群を同質接合体型に,第二群を異質接合体型(I)(前還元分離型),第三群を異質接合体型(II)(後還元分離型)に準ずるものと見なし,三群に群別することによって得られた後還元分離頻度は約50%である。従ってこれらの事実から同菌の胞子色調形質発現は単一遺伝子支配で,その核分裂時に屡々同形質発現の機能的因子が欠失されるか,同因子の作用が不活性化されることがあろうと推察した。