著者
芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.478-"486-1", 1963-07-10

樺太犬のもつ北方犬特有のすぐれた習性や本能,また寒地に適応した特殊な生理機能と若さの体力が,昭和基地という南極では比較的安全な露岸地帯の基地を中心にして生活をなし,またアザラシやペンギンにもめぐまれて生存し得たものと推察される。
著者
黒田 憲彰 根岸 孝
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.371-374, 1975-06-10

畜肉(牛肉,羊肉,豚肉および鶏肉),魚肉(アブラコ,サンマ,イワシおよびタラ)および豆類(エンドウ,アズキ,テボウおよびキントキ)のリン脂質中にしめるプラズマローゲンの含量を求めた。畜肉では7〜13%,魚肉では4〜6%および豆類では0.1〜0.2%であった。
著者
熊谷 幸民 小野山 敬一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-85, 1988-11-30
被引用文献数
1

1.北海道の胆振,日高,上川,網走,十勝,釧路,根室の7支庁管内で,有害鳥獣駆除の捕獲者に対するアンケート調査と聞き込みおよび現地調査によって,エゾシカによる農作物被害の実態を調べた。2.アンケート調査での被害作物はビート,マメ類,トウモロコシ,コムギ,バレイショ,牧草が主で,他に水稲,ソバ,野菜類(ダイコン,スイカ,カボチャ,タマネギ)があった。ビートは5〜6月に,マメ類トウモロコシ,バレイショは6〜10月に,コムギと牧草は4〜6月に被害が多かった。3.アンケート調査で被害回答の多かった作物は,必ずしも作付け面積の大きさに比例していなかったが,被害回答の多い作物の畑では有害鳥獣駆除によるシカの捕獲数も多かった。4.聞き込み調査による被害状況はアンケート調査の結果を裏付けるものであった。被害形態は食害と踏圧害に分けられ,作物種と時期によっておよそ定まっていた。被害地が沢筋,山間部または防風林の近くの農耕地であること,畑に出てくるのは雌が多いことは各地で共通していた。5.被害地でのエゾシカは,ビート,マメ類などの特定種に嗜好性を示しながらも,それらのない地域あるいはない時期には牧草に依存するこというように生息地の環境に順応し,その食性の幅が広いことないしは可変性を持っことが考えられた。6.被害地におけるエゾシカの行動と農作物被害の状況は,餌植物の季節的変化(農作物の成長と隣接林内の植生変化)とエゾシカの生態的特徴(越冬地からの移動と繁殖)の複合的な要因によって決まると考えられる。
著者
大原 洋一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.431-445, 1979-11-20

アルファルファは世界に広く分布し,もっとも重要なマメ科牧草の1つである。この牧草は家畜飼養に必要な養分に富むものである。今回の報告は温度がアルファルファの生育,乾物収量に及ぼす影響に関する栽培学的面から実施した一連の研究計画の一部についてである。供試品種は北海道に適応する6種であるが,乾物収量の他に窒素成分及び6品種の1つであるライゾマ品種についてアミノ酸含量の分析を実施した。これらの研究結果を要約すると次のごとくである。1.供試品種はウィリアムスバーク,サラナック,バァナル,ナラガンセット,ライゾマ及びデュピイの6品種である。これらをファイトトロン内で15℃,20℃,25℃及び30℃の恒温として栽培したが初期生育,第1回再生,第2回再生とも25℃における生育がもっとも旺盛であり,乾物収量も高かった。これについで30℃,20℃,15℃の順に低減した。品種間ではサラナック,ウィリアムスバーク,デュピイの3品種が他の3品種に比し,より生産的であった。2.比較的低温に栽培したアルファルファは高温に栽培したものに比し窒素含量が高く,アミノ酸含量もこれに平行した。このように窒素含量,アミノ酸含量はアルファルファの生育に関連が深く,必須アミノ酸の含量は温度の上昇に伴って増加する傾向にある。今回,分析したアミノ酸は16種であるが,そのうちアスパラギン酸,グルタミン酸,ロイシン,リジン,アラニン,プロリン及びセリンは他のアミノ酸に比し高含量であった。メチオニン及びヒスチヂンが他のアミノ酸よりも少量であった。以上のごとく,今回の研究では温度がアルファルファの生育と密接な関係のあることを実証したが,この知見は多年アルファルファの栽培で問題になっていた栽培学上の若干の問題点を明らかにしたように思われる。したがってこの研究成果は日本の北方地域におけるアルファルファの栽培面積を増大せしめる可能性をもたらすものと期待される。
著者
大原 久友 福永 和男 吉田 則人 古谷 政道 大原 洋一 伊藤 具英 松岡 保男 伊藤 辰雄
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.225-"249-4", 1967-12-31

著者らは公共草地における造成・維持・利用管理に関する一連の研究を行なっている。今回の報告は北海道河東郡上士幌町字清水谷の町有公共草地において実施したものであり,この清水谷公共草地では主として放牧育成牛による放牧育成を行なうものである。その調査研究の結果を要約するとつぎのごとくである。1.この公共草地は10年以前に森林であったが,その後自然草地(混牧林)として馬の育成に利用されていた。1961年から3ヵ年間にわたり集約草地として改良し,1964年からの3ヵ年間は蹄耕法による簡易草地として造成したものである。その立地条件を示すと全面積: 127ha集約草地造成: 30ha蹄耕法による簡易草地造成: 60ha自然草地: 37ha地況: 標高は400〜480m,乾性地85%,湿性地15%である。土壌: 十勝岳C統火山灰で被覆される火山灰土壌であり,表土のpHは5.9,燐酸吸収係数は1970である。植生: 造成前の植生は乾性地ではカシワ,ミヅナラなどの広葉樹,湿性地ではヤチハソノキの林相であり,前者はササ型(ミヤコザサ),エゾヤマハギの優占する長草型,後者はヒラギシスゲの優占する長草型であった。気象: 一般に低温であり,積算温度は2300℃内外である。時として多雨,無霜期間が短い年もある。したがって一時的には普通畑作物の限界地帯であり,草地農業地帯に属する。2。造成集約草地では常法,つまり障害物除去,耕起,整地,施肥,播種,覆土,鎮圧によって造成した。そのうち施肥と播種はもっとも重要であるが,その量は造成年次によって若干異なる。肥料として炭カル,熔燐,草地用肥料2号(6-11-11),草種としてチモシー,オーチャードグラス,メドウフェスク,アカクローバ,アルファルファ,ラジノクローバを2.2〜2.5kg/10a混播した。蹄耕法による造成も集約草地に準ずるが,集約草地造成の場合よりもやや混播草種数を多くし,播種量も増加した。混播量は3.5〜4.2kgである。造成草地の植生はいずれもよく保持され,とくにオーチャーグラス(マスハーデイ),チモシー(クライマックス),メドウフェスク,ラジノクローバおよびシロクローバ(ニュージランド)などが旺盛に繁茂し,雑草の侵入を防止している。10a当り産草量は3トン内外であるが牧養力はかなり高い。造成後7年次の草地でもかなり植生構成が良好である。造成経費は集約草地の3ヵ年平均がha当り90,628円,蹄耕法による造成草地のそれは38,088円であり,後者の造成費は極めて少ない。[table]3,利用管理集約草地30haを9牧区,簡易草地60haを7牧区,野草地37haを3牧区,つまり全面積127haを19牧区,1牧区平均6.6haに区分し,放牧期間を通じて植生に応じて輪換放牧を行なった。輪換回数は牧区,年次によって異なるが,おおむね2〜7回であり,5回の輪換がもっとも多い。余剩の生じを草については乾草として調製した年もある。1965,1966,1967年における利用状況を示すと左のごとくである。[table]4.放牧期間における育成中の発育入牧時と中間時および終牧時に体位の測定を行なったが,その結果を示すと上のごとくである。入牧時と終牧時における体重の回帰直線はつぎのごとぐである。1965年入牧時Y=14.644x十96.06r=0.939 1965年終牧時Y=15.569x+116.86r=0.946 1966年入牧時Y=13.232x+108.72r=0.971 1966年終牧時Y=16.513x十155.947r=0.965このようにこの公共草地においては放牧育成牛にかなりの効果が認められたが,その原因として考えられる点を指摘すると(1)植生の構成,とくに少ない侵入雑草とマメ科率の保持(2)かなり高い放牧密度(3)植生に応じた適当な輪換方法5.補助飼料給与が発育に及ぼす影響放牧育成牛の栄養を向上せしめるため各群10ヵ月,12ヵ月,14ヵ月齢のもの12頭を用い骨の組成と同じ第3燐酸カルシウムおよび育成牛用配合飼料を給与した結果は左のごとくであり,補助飼料給与の効果は認められる。したがって,育成牛の栄養不良なもの,植生の衰退したときなどはこのようなミネラル,育成牛用飼料を補給することがのぞましい[table]6.経営収支経営収支では1964年は赤字決算(14万円)であったが,1965年以降は黒字決算(1965年は8万円,1966年は52万円,1967年は67万円)となり年とともに次第に黒字額が増加している。収入の主な財源は放牧料と採草料であり,支出の大部分は管理人のための賃金と肥料代である。以上のようにこの清水谷公共草地はかなり造成年次から年数を経ているにかからず,植生の維持がよい状態にあり,集約草地と簡易草地を組み合わせてかなり高い牧養力を保持している。さらに育成牛の栄養も良好にして発育効果も大であり,加うるに経営収支も黒字に転じている。さらに労力の面からみてもこの公共草地は熟練した管理人1人で管理できる単位としてもっとも適正な規模のものであろう。したがってこの草地はもっとも安定した公共草地の1つにあげることができよう。
著者
大原 洋一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.79-88, 1980-11-29

この試験は,標高が高く,気温が低く,しかも土壌があまり肥沃でないような環境条件,つまり気象的にも地形的にもアルファルファの生育に適さない自然草地でアルファルファ導入の可能性を明らかにするために実施したものである。試験は1962年から1965年の4年間にわたって実施し,供試品種はナラガンセット,バーナル,デュピイ,イタリー,グリム及びライゾマの6品種である。これらの品種は海抜標高の424m,525m,717mの3カ所に3反覆の試験地を設定して栽培した。その結果を要約するとつぎのごとくである。1.一般に標高が高くなるほど気温が低くなる。生育初年目のアルファルファの生育は低標高の試験地の気温が高かったため高標高の試験地におけるよりも良好であった。このことは播種当初の初年目の生育は気温に対する感応が大きいことを示すものである。しかし,2年目以降の乾物収量では中位標高の試験地のものが他の試験地におけるよりも高いのは肥沃度が他の2カ所よりも高いからである。つまり,アルファルファの乾物収量に地力が大いに影響している。3年目以降になると,きびしい寒さのため冬枯れし,特に高い標高のところでは消滅してしまう。この試験結果から考えアルファルファの生育可能な標高の限界は600〜700m位であり,積算温度(5月1日から9月30日に至る1日の平均気温の合計)の下限は2,000〜2,200℃位に推定される。このようにアルファルファの乾物収量は気象及び土壌条件に左右されることが大きい。2.環境条件のアルファルファの生育に及ぼす感応は品種によって異なるが,供試した6品種の中ではナラガンセットとライゾマが生育期間に低温,濃霧の多い気象,日照時間の少ない環境の下でもっとも適していることが確認された。生育3年目では700m以上の高い標高に導入したアルファルファ品種の多くは冬枯れのため消滅するに至った。3.アルファルファの乾物収量と品種間,標高間,収穫年次間にそれぞれ1%の水準で有意差を示した。また積算温度間に正の相関関係がみられた。以上のごとく,この研究ではアルファルファの永続性を保持し,高い乾物収量をあげる標高の上限は700mであろうと推定された。しかし品種によっては永続性を保ち,冬損に耐える生理的特性をもっているものがある。したがって,このような冷涼な気象,凍結した土壌に耐えるようなアルファルファの育種を行うことも必要であろう。同時に適当な栽培管理を行うことも,このようなきびしい環境条件の下でアルファルファを導入する可能性が実現されるであろう。
著者
芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.37-44, 1967-03-31

1.ヒグマの繁殖は4歳から隔年に1産するといわれてきたが,昭和23年以降の飼育繁殖成績では,ヒグマの初産年齢は3歳で可能であり,また性周期は1年で,連年出産することも可能であることが明白となった。このことは昭和21年以後の捕獲数がそれ以前の捕獲数よりも増大していることの要因の1つであろうと考えられる。2.ヒグマの分娩時期は,37例の調査から1月下旬が最も多く,1月中旬・2月上旬がこれに次ぎ,2月中旬・下旬にも出産例がみられた。3.1腹の産子数は1頭ないし3頭で平均は1.7頭である。また産子の性比は雄が50.6%であった。4.北海道のヒグマの生息数は,捕獲統計によれば大正12年から昭和17年まで20年間の年平均捕獲数は約293頭で,およそ1,200頭の生息数と推定される。また昭和21年から昭和40年まで20年間の年平均捕獲数は約493頭で,生息数は3,000頭と推定される。したがって昭和21年以降にヒグマの生息数が増大したことが明らかである。
著者
清水 亀平次 後藤 仁 三宅 勝 小野 斉
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.160-170, 1965-03-25

昭和38年10月より翌年3月にわたり十勝,釧路,根室,北見など道東地区の専業酪農家各3〜6カ所の乳牛計198頭788分房について異常乳発生実態と改善に関する調査研究を行なった。その概要は次のごとくである。1)異常乳(C.M.T.+以上でかつ細胞数50万以上)の発生は最高が釧路の54.8%,最低が根室の19.2%,平均32.1%でC.M.T.++以上で細胞数100万以上の高度異常乳がこのうちの57.3%を占ぬていた(第5表)。2)異常乳295分房の細胞培養結果,ブドウ球菌が最も多く27.5%,レンサ球菌,混合(レンサ球菌あるいはブドウ球菌とミクロコッカスが主体),ミクロコッカス,その他の菌(コリネバクテリウム,大腸菌,枯草菌,カビ)の順にそれぞれ21.4%,17.9%,5.1%,3.4%で菌検出陰性は24.7%であった(第9表)。3)異常乳から検出されたブドウ球菌は正常乳由来のそれにくらべCoagulase陽性菌が多く,レンサ球菌ではB群レンサ球菌(Str. agalactiae)が大部分を占めていた(第10表)。4)細菌培養所見と最もよく合致したのは牛乳内細胞数でC.M.T.,N.F.T.,B.T.B.テスト,異常乳試験紙の順に感度が低下した。B.T.B.テスト,異常乳試験紙では反応陰性の中に高度異常乳が相当含まれるのがみられた。従って細胞数,C.M.T.の成績を勘案して異常乳を判定する方法が簡易で信頼度が大きい(第2,3,4表)。5)異常乳治療のため7通りの薬剤による治療試験を実施した。このうち複合ストレプトマイシン100mgとペニシリンGナトリウム10万単位またはこれらにPVP 100mgを添加したものを5%ブドウ糖水溶液50mlに溶解し,搾乳後の乳槽内にただ1回注入するだけで前者にあっては34.4%,後者にあっては35.3%が異常乳から正常乳えと改善され,これらの効果は1%以下の危険率で有意であった(第11表)。終りに本調査研究の実施に当りご協力を頂いた関係教室所属学生各位ならびに分離菌株の諸性状検査に終始援助くだされた岡重美,藤堅太郎の両君に感謝する。また治療試験に当り薬品を提供してくださった武印薬品工業KKならびに三共製薬KKに深謝します。なおこの研究は昭和38年度北海道総合開発企画部の委託研究費によって行なわれたものである。
著者
神田 〓子 西村 肇 千葉 検事
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.348-354, 1962-10-10

昭和35年7月における道東農民の食糧構成ならびに熱量,蛋白質の摂取状況を階層別に比較考察した。その結果を総括すると1.全般的に,米以外の穀類および牛乳の消費量が多く,米および肉,果実が著しく少ない。2.カロリー摂取は1人1日平均2,135cal.であり,この89.8%は植物性食品から得ている。D階層のカロリー摂取は1,805cal.で著しく低い。3.蛋白質は1人1日平均77.Og摂取しており,そのうち24.5g(31.5%)は動物性蛋白質である。動物性蛋白質の摂取量は低階層にゆくほど低くなり,特にD階層は少ない。
著者
小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.334-361, 1970-11-25

1963〜1968年に十勝地方の平野部から高山部までの特に音更川水域のブユ相を調査した結果は次の通りである。1.十勝地方には2属3亜属10種のブユを産する。調査の中心となった糠平地方には10種がすべて棲息する。2.成虫の出現期:各種ブユ類の出現期とその最盛期はオオブユ4,5,6月(5月中旬) キアシオオブユ5,6,7月(6月上旬) ウチダツノマブユ平地高地6,7月(6月下旬) 7,8月(7月下旬) オタルツノマブユ5〜9月(6,8月) アオキツメトゲブユ5〜9月(6月中旬) アシマダラブユ5〜9月(6月中旬) オオアシマダラブユ5〜9月クロアシマダラブユ5〜9月(6,8月) ァカクラアシマダラブユ5〜9月ヒメアシマダラブユ8,9,10月(8月下旬) 3.棲息場所:一定面積当り集中的に個体数が多くなる場所を河川型によって分けると源流型ウチダツノマブユ上流型アシマダラブユ,オタルツノマブユ,アカクラアシマダラブユ中流・下流型オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ,オオアシマダラブユ,クロアシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ河川の形質(川幅,流速,水深,底質など)によって棲息場所が規定されており,海抜高,水温,気温などはあまり関係がない。4.個体数:発生源となる好適河川のRiver densityが発生量を左右し,一定面積当りの個体数の多寡を比較すると,ウチダッノマブユーアシマダラブユーアオキツメトゲブユーオオブユーキアシオオブユの順に少なくなりいずれも普通種であるが,オオァシマダラブユ,クロァシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ,オタルツノマブユは稀少種である。5.高山部雪渓直下の原始河川の細流に大量発生するウチダッノマブユは氷河期のRelicであると推察される。6.吸血源:各種ブユ類の刺咬動物嗜好性はオオブユ,キアシオォブユ,アシマダラブユ人,豚その他牛馬 ウチダツノマブユ鳥類 アオキツメトゲブユ人畜,鳥類 ヒメアシマダラブユ人畜 オオアシマダラブユ馬,その他人,牛 クロアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ反芻獣,その他人 オタルツノマブユ鳥類 7.人体に特に被害を与える種:アシマダラブユ,オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ。他の人体から吸血するブユ類はいずれも個体数が少なく被害はほとんどない。8.東大雪高山部で7,8月にウチダツノマブユが大量発生するが,人体から吸血するのはこれに混じている小数のアシマダラブユとヌカカの1種である。
著者
小野 泱 岩佐 光啓
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.751-768, 1976-06-25

1.1973年6月から9月にわたって各月毎に1回,4回にわたり日高幌尻岳七ツ沼カールボーデン(1,600m)とその登山口(900〜1,000m)において吸血昆虫の種類と月別発生状況を調べ,4属9種のブユ類,4属11種のカ類,1属5種のヌカカ類,3属4種のアブ類を確認した。特に七ツ沼におけるブユ類の日周活動についても調査した。2.一般に日高山系は特有の地形,気象条件,植物相などから大雪山系に比較して吸血昆虫の発生量は少ない。これは特に七ツ沼カールボーデンは乾燥した砂礫質で,同一高度の大雪山の高原状湿原と環境が著しく異なっている点と関係深いようである。3.ブユ類ではTwinnia sp.,Cnephia (Stegopterna)sp.の2属が今回の調査で北海道にも生息していることが確認された。種名は本州産,大陸産の類似種と幼虫,雄成虫の形態が比較されていないので後日検討すべきである。4.七ツ沼のブユ類ではTwinnia sp.が優占種となり,6月から9月まで見られ7月が最盛期となっていた。これに少数のアシマダラブユが混じ,きわめて少数のC. (Stegopterna)sp.,ウチダツノマユブユ,キアシオオブユ,スズキアシマダラブユおよびアカクラアシマダラブユが採集された。5.Twinnia sp.の日周活動は7〜16℃の温度範囲で,夕方にピークが見られる1山型消長が普通であった。しかし早朝から無風快晴15〜16℃となった日には朝夕にピークが見られる2山型を示した。6.ブユ類の刺咬活動は18〜28℃の温度範囲で観察されたが,優占種のTwinnia sp.は人体に吸血性はないと見なされ,アシマダラブユも亜高山帯のように明瞭な吸血性を示さなかった。7.カ類ではチシマヤブカが最も多かったが,大雪山系に見られるような大発生は認められなかった。七ツ沼で採集されたオオモリハマダラカは北海道未記種である。8.ヌカカ類ではヌカカが優占種となっていたが,本種も大雪山系のような大発生は観察できなかった。9.アブ類は4種発見されたが,それらの個体数は少なかった。
著者
本江 昭夫 福永 和男
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.p85-91, 1983-06

(1)山地の大規模草地において植生調査を行い,出現した種について積算優占度を求めた。出現頻度の高い19草種について,反復平均法で序列づけを行った。(2)序列づけされた種について,第1軸には牧草地の造成方法が,第2軸には利用方法が強く反映していた。(3)クラスター分析により,48スタンドが4種類の植生タイプに分けられた。すべての植生タイプにおいて,オーチャードグラスとホワイトクローバーが優占していた。さらに,採草タイプではチモシーとオオスズメノカタビラが,放牧タイプではケンタッキーブルーグラスとメドウフェスクが,野草タイプではササ類の優占度が高かった。(4)山地の大規模草地における植生の変異には,標高や立地条件よりも人為的な撹乱圧の程度が強く関連していると推察された。
著者
永木 正和
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.555-570, 1977-07-25

露地野菜生産者は,作付面積の増大が価格低落をもたらすという事実に熟知していても,自らによっては作付面積を制御できないため,クモの巣サイクルに陥って,価格暴落による損失を余儀なくされていた。一方,消費者もクモの巣サイクルのもたらす価格高騰が家計を不安定にし,露地野菜が必需的食料であるだけにその家計へのシワ寄せも大きかった。本来,この種の問題は,基本的には,生産者の投機的な作付行動の結果としてもたらされたものであり,投機性を排除した生産者の積極的な市場対応によって,自ら作付面積変動を制御して,需給均衡する価格の実現と維持を計らなければならない。しかし,現実には生産者が市場対応をとりうるだけの条件が整備されていないし,それがなしえた場合にも限界があった。そこに,政府等の政策主体が,露地野菜におけるクモの巣価格-供給量変動を断ち切るための積極的な政策対応がとられるべき必然性がある。小稿は,1)そのような安定価格と安定供給を実現するための政策対応として,いかなる種類の政策がとられるべきであるか,2)現行の国の価格補填政策がいかなる問題点を含むか,3)それではいかなる方式の補填政策が採用されるべきであるかについて考察した。要約すれば以下のようである。(1)価格安定化対策としての流通,市場対策としては,価格形成には直接関与せず,価格の空間的,時間的な競争均衡達成が可能な限り容易になしうるように体制整備することである。具体的には,市場,産地情報の収集,分析,公表と,産地が積極的市場対応をなしうる条件としての高生産力専業農家の育成,その集団化による主産地化,および共販体制の整備と計画生産,計画販売の推進にある。(2)現在の国の「野菜価格補填事業」は,それが生産者所得を補償する事後的な対応であるとともに,次年度の価格高騰を防ぐ事前的な対応の双方を狙いとする点で意義がある。しかし,a)全産地,全市場を対象とする補填政策でないために,限界生産者,あるいは弱小産地の切り捨てになる政策になりかれないし,価格変動抑止効果も小さい。b)補填額に限度があり,真の生産者収益の安定を保証するものではなく,しかもクモの巣サイクルを必らずしも収歛方向に指向させるものでない点で不十分である。c)「保証基準価格」は,所得補償と価格高騰抑止のいずれを重視するかによって算定方法が相違するが,現行の補填政策はその狙いが明確でない。(3)現行の補填方式の問題の反省に立って,所得補償と価格暴騰抑止の双方を同時に目標とする補填方式を提示した。それは,2段階的な補填方式をとり,基本的には,需給均衡供給量を超過して収益低下をもたらす場合,それが反収増による収益低下であれば適切な水準で補填し,経営の安定を計る。しかし,作付面積の増加による場合には,需要法則に従って収益が低下し,これによって生産者の自主的制御作用が働く余地を残した。この点で京都府の行っている「粗収益補償方式」と明確に相違する。次に,収量変動を考慮しながら,来期の価格暴騰を防ぐため,ある一定の信頼水準において需要価格が一定以上には上昇しないようにするための補填額の算出方法を示した。以上のような,2段階の補填方式を採用するなら,生産者の直面する需要曲線は2重屈折線として示される。ここに提示した補填方式が採用されることによって本来の価格安定,経営安定,ひいては需要に適合した安定供給が達成されるであろう。
著者
光本 孝次 松村 信雄 五十嵐 正
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.606-610, 1973-01

良い資質の乳牛のイメージを得るために,一般レベルの乳牛群,ブリーダーの乳牛群と輸入乳牛群の体型7部位と乳房形質12部位を測定した。測定時期は約乾乳期と約最高泌乳期の2時期である。1)体高,体長および尻長において,輸入牛とブリーダーのそれには非常に類似した平均値が得られた。輸入牛の腰角幅と〓幅の平均値はブリーダーのそれより大きいようである。一般レベルの乳牛は相対的に小柄である。2)輸入牛の乳房は泌乳による乳房の縦の変化が少なく,横の変化が非常に大きい。3)前後乳頭間隔では輸入牛の膨張係数が低い。
著者
Cajayon Leticia Piornato 三浦 弘之 三上 正幸
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-45, 1986-11-30

ブロック状牛肉の深部に対するPseudomonas fragiとProteus vulgarisの影響について2℃で0,3,7および14日間貯蔵した時の変化を5回繰り返して調らべた。微生物学的分析の結果,P. fragiはPr. vulgarisよりも早く増殖した。P. fragi接種区のpH上昇は急速に起ったが,Pr. vulgaris接種区は緩慢に上昇した。揮発性塩基態窒素とアミノ態窒素の量的な変化は,P. fragiがPr. vulgarisよりもタンパク分解が大きいことを示した。非接種の対照区は貯蔵期間の終りの時期にわずかに増加した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像の見かけ上の変化は,7日目におけるマイナーバンドの消失からP. fragi接種区はPr. vulgaris接種区よりも,タンパク質分解活性が少し大きいことを示した。走査型電子顕微鏡の結果から,筋線維に対する作用は,P. fragiを接種した試料が,Pr. vulgarisを接種した試料よりも腐敗の進行により崩壊が著しかった。筋原線維レベルでの観察の結果から,主要なタンパク質でないタンパク質画分の分解が起っているものと思われ,そのことは,SDSポリアクルアミドゲル電気泳動による結果からも支持された。
著者
リベラ W.C.D. 三浦 弘之 三上 正幸
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.207-216, 1981-11-15

Pseudomonas fragiは,冷却冷蔵された食肉中に占められる主要な微生物相の一つであることはよく知られている。塩類可溶性のタンパクの著しい減少は,Pseudomonas fragiを接種した鶏の筋肉のWeber-Edsall溶液抽出物の電気泳動図から明らかになった。即ち,Weber-Edsall溶液で抽出した鶏の筋肉に,Pseudomonas fragiを接種すると5℃で14日間経過した時に,タンパクの泳動バンドの性状と数に大きな変化がみられた。しかし,2日目までの性状や数にあまり大きな変化がなかったのではないかと思われた。スラブ電気泳動パターンによれば,塩類可溶性タンパクの分解はすでに5日間保蔵したあとにはっきりと起った。余分なバンドがMプロテインのところに現われ,7日後には非常にはっきりとしたバンドになった。そうして,ほとんどの泳動バンドは,14日目になると微生物のタンパク分解力によって消失した。このPseudomonas fragiの菌体外酵素は,鶏の筋肉のWeber-Edsall溶液抽出物に対して5℃で検討された。Pseudomonas fragiの菌体外酵素はセファデックスG-100のカラムクロマトグラフィにより精製された。その結果,タンパク分解活性をもつ2つのピーク(BおよびC)が観察された。これらの酵素画分の塩可溶性タンパクに対する崩壊のパターンは,対照の試料と同様に電気泳動的に研究された。ミオシンヘビーチェーンは,酵素画分Bによって小さなバンドが退行し,酵素画分Cでは完全に消失した。
著者
鈴木 省三 左 久 斉藤 保則 坂口 昭彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.p317-321, 1982-08

搾乳室進入順位と待機場内における各牛の位置・動態との関係から,進入順位決定に関与する要因を検討する目的で,ロータリー式搾乳室を利用する39頭の搾乳牛群について,15日間,30回にわたり,各個体の待機場内における移動状態を1頭進入するごとにフィルムにおさめた。待機場内の最初の位置は,最上位グループが最前列を選び,最下位グループは最前列を避ける他は場所を選ばず,中間グループは上位ほど前方に位置する傾向があった。待機場内では,1頭が搾乳室へ進入するごとにかなりの個体が位置を変え,総体的には逐次前方に移動するが,同じ位置に長くとどまるもの,一挙に2ゾーン以上前進するもの,後退するものなどがみられた。中間グループでは搾乳室進入に対する個体間の優劣関係は不明瞭で,待機場内の最初の位置,隣接する他の個体との関係,個体の習性・状態など偶発的要因が複雑に関与してその時々の進入順位を変えるものと推察された。
著者
竹内 正人 大島 義広 藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.p157-165, 1987-06

日高山脈の中部と北部の72か所で,1978-1983年の6年間に,1,145個体のネズミ類を採集し,これらの分布について調べた。種数と捕獲指数,種多様度は高山帯の低木群落では少なくまたは小さく,低標高の森林で多くまたは高くなった。高山帯の低木群落ではヤチネズミ属のネズミ類が優占し,森林ではアカネズミ属のネズミ類が優占していた。ミヤマムクゲネズミとエゾヤチネズミは,高山帯の低木群落から低標高の森林にいたるまで捕獲されたが,湿性高山植物群落や川沿いの森林では前者が多かった。ミカドネズミは様々な環境で捕獲されたが,少なかった。ヒメネズミとエゾアカネズミは森林,とくに針葉樹林以下で多くなった。カラフトアカネズミは非常に少なかった。