著者
江上 京里
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.9-16, 2002-06-30
被引用文献数
4

本研究は、健康な20代の男性16名からなる被験者にクレペリン検査を用いた計算作業による負荷を与え、負荷からの回復過程において腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施し、交感神経活動及び主観的な快さがどう変化するのかを明らかにしたものである。便宜的標本抽出法による準実験研究デザインで、同一被験者に、腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施する実験群と実施しない対照群を設けた。交感神経活動の測定には、皮膚電気活動(electrodermal activity : EDA)として皮膚電気抵抗水準(skin resistance level : SRL)と皮膚電気伝導水準(skin conductance level : SCL)、平均皮膚温を用い、快さの測定には日本語版UMACLを使用した。分析の結果、実験群の平均皮膚温は対照群に比べて、腰背部蒸しタオル温罨法ケア終了後、負荷で上昇していた状態から基準値までの回復が有意に早かった。また腰背部蒸しタオル温罨法ケア中のSRLは有意に大きく、主観的快さが生じ、主観的緊張感が低下していた。しかしSCLでは有意差は認められなかった。よって、腰背部蒸しタオル温罨法ケアは従来いわれているように皮膚温を上昇させるばかりではなく、低下させるものでもあるといえる。しかも皮膚温が低下した実験群には快さが生じている。このことは腰背部蒸しタオル温罨法ケアは皮膚温の一定方向の変化をもたらすのではなく、低ければ高く、高ければ低くするという当人の快い状態を作る調節能を促進している可能性を示唆している。

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