著者
野家 啓一
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.50-51, 2004-06-23
著者
倉爪 真一郎
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.33, pp.26-30, 2007-03

ミシェル・フーコー晩年の倫理思想が,終末期医療における患者-家族-医療従事者関係の構築という課題にどう答え得るか,これが本稿の主題である。そして2つの可能性が導き出された。第一に,自己決定権(自律)と死(固有性)の関係は,死(真理)に到達するために主体をどう変化させるか,という倫理の問題として議論され得るということである。第二に,医療従事者への信頼と患者の死(固有性)を尊重するという贈与-感謝関係は,言葉を通しての倫理的関係として議論され得るということである。
著者
菱沼 典子 川越 博美 松本 直子 新幡 智子 石川 道子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.31, pp.46-50, 2005-03
被引用文献数
1

聖路加看護大学看護実践開発研究センターでは,2004年5月に,市民に健康情報を提供する場として,聖路加健康ナビスポット「るかなび」を開設した。本論文は,「るかなび」開設までの経過,開設から5ヵ月間の来場者の現状の報告である。医療の主体は病んでいる患者にあり,医療者はその回復を手助けするパートナーであるという関係を構築していくには,まず,市民と医療者の間の圧倒的な情報量の差を埋めることが必要である。主体的に健康生活を創り,自分の健康を自分で守る市民社会をめざして,必要な健康情報を得る方法ならびに,健康情報の使い方に関して情報を提供することを目的に,「るかなび」を開設した。「るかなび」は,月曜日から金曜日までの10時から16時までをサービス時間とし,スタッフとしてヘルスコーディネーターまたはヘルス・ボランティア1〜2名が常在,書籍,パンフレット,血圧計,身長・体重計,コンピュータを備えている。開設から9月までの来場者は428名で,利用目的は健康相談が26%,立ち寄りが22%であった。来場者のうち,アンケートに回答を得られた90名では,40〜60歳代が7割,女性が7割であった。市民が欲していることに合わせ,教育,研究にも活用できる場になるよう工夫を重ねたい。
著者
小澤 道子 香春 知永 横山 美樹 岩田 多加子 大久保 暢子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.27, pp.80-86, 2001

本調査は,「看護学」の出発点において学部生群と学士編入生群がどのように看護の「対象」と「方法」を考えているのかを知ることを目的とした。対象は,S看護大学に1997年度と1999年度の入学生169名(学部生132人・学士編入生37人)であり,4月の初回講義時に質問紙法を用いて現在の健康状態・生活の満足・元気観・健康観,そして看護観は「今,あなたが考える看護とは何でしょう」の設問で自由記述を求めその内容を分析した。その結果,(1)看護の「対象」は病気をもった人や病気や怪我をもって苦しんでいる人に代表される病気を中心とする者が7割以上を占めていること,(2)看護の「方法」は,記述の中の動詞に着目すると81種類に分けられ,使用頻度の高い動詞は「ケアする」「サポートする」「(必要なことを)〜する」「援助する」「〜してあげる」「手助けする」などであったこと,そして,これらの動詞の目的語を検討するとさまざまであり,同じ動詞の表現であっても意味する内容は多様であることも示唆された。また,学部生群と学士編入生群は,看護の「対象」に関しては類似していたが,看護の「方法」については学士編入生群の方が1人当たりの動詞の数が多く,動詞の意味するものに技術的なことや知識への期待がこめられているとも解釈できる結果であった。今後,看護教育を受ける中で看護の対象と方法がどのように変化していくかが次への追究課題である。
著者
大久保 暢子 雨宮 聡子 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.58-63, 2001-06-30
被引用文献数
3

意識障害患者に対する意識レベルの改善をめざした看護ケアの一つに、背面開放端座位ケアがある。背面開放端座位は背面を支持せず、背筋を伸ばし脊柱の自然なカーブを損なわないで、足底を接地した姿勢であり、補助具が開発されている。くも膜下出血および脳内出血後の遷延性意識障害患者1例に、入院中および在宅での訪問看護で補助具を用いた背面開放端座位ケアを行い、意識レベルの改善に背面開放端座位が関与している示唆を得たので報告する。意識レベルの測定には、東北療護センター遷延性意識障害度スコア(以下広南スコアと称す)を用いた。事例は78歳の女性で、入退院と訪問看護による在宅での療養生活を送ることで背面開放端座位ケアが提供される時期、されない時期を繰り返すことになった。初回の背面開放端座位ケアは、入院中で遷延性意識障害と診断されて4ヶ月後から退院までの5週間であり、2回目は退院後10日を経た後からの7週間であった。初回導入前の広南スコアは61〜64点(重症例)で、毎日、1日2回の背面開放端座位ケアを導入して広南スコアは徐々に低下し、5週目に54点(中等例)まで回復した。退院後10日間の寝たきり状態で、スコアは背面開放端座位ケア導入前と同程度の64点(重症例)に戻っていた。再度、背面開放端座位ケアを週3回1日1回ずつ開始したところ、2週目で51点(中等例)に改善を示し、ケア継続中はその点数を維持していた。ケアを施行した期間は長期にわたり、他の要因に変化があった可能性はあるが、医学的治療には変化がなく、在宅への移行は大きな環境の変化であったが、スコアが上がる結果となり、環境変化よりも寝たきりになったことが、意識障害度に変化を与えたものと考える。背面開放端座位ケアの施行に関し、その開始時期や継続性、1日の回数等、検討課題が残されたが、今後さらに事例検討を重ねて、背面開放端座位ケアの意識回復への効果を検証していきたい。
著者
岩井 郁子 佐藤 紀子 豊増 佳子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998 (Released:1998-04-01)

看護記録は、保健師助産師看護師法の規定や概念がない。診療報酬の算定要件として看護計画と経過記録が求められ、施設毎に記載内容と様式を決め標準化がなされていない。診療記録開示において看護記録は診療記録に含まれ、また、個人情報として位置づけられた。このような中で、診療記録開示の目的にかなう標準化された看護記録が求められている。本研究では、診療記録開示の目的を踏まえ、アメリカ、イギリスの看護記録の実際と記録指針から、カルテ開示の目的にかなう看護記録モデルの本質を検討し、また、74病院の看護記録の分析と109名の看護記録記載を指導する看護師の指摘から、現状の看護記録をめぐる課題を明らかにした。これらの結果を踏まえて、厚生労働省、関連団体である日本看護協会、日本医療機能評価機構の指針や保健師助産師看護師法、医療法等の法的な記述から看護記録の概念を抽出し、概念モデルを作成した。概念は、看護記録記載の目的と内容を示し、看護記録は、看護者としての倫理・業務上の責務の遂行、質を証明するものと位置づけた。さらに電子カルテ時代、患者を中心に、医療チームメンバーが共同で記載できる標準化された記録として、日本において一般化可能な記録枠組みを選択し、関連団体の指針を活かした構成要素およびその概念から看護記録モデルおよび記載基準を作成した。この基準は全国52の社会保険病院の看護記録記載基準に活かした。基準だけでは、記載内容の標準化は困難である現状から、基準に基づく具体的な記載例を含む看護記録モデルを提示した。このモデルは診療記録開示の目的にかなうしかも記録時間の削減に貢献できる内容をめざした。
著者
菱沼 典子 石川 道子 高橋 恵子 松本 直子 鈴木 久美 内田 千佳子 金澤 淳子 吉川 菜穂子 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.76-82, 2007-06
被引用文献数
1 1

目的:大学内に市民が立ち寄り活用できる健康情報サービススポットが開設されて3年目になる。この健康情報サービススポットの広報活動が,利用者の増加に有用であったかどうかを検討し,今後の広報活動への示唆を得ることを目的に本研究を行った。方法:調査対象期間は2004年4月〜2006年12月であり,健康情報サービススポットの記録と,研究者間での振り返りからデータを収集した。広報活動を時間軸に沿って整理し,来訪者数,リピーター,健康相談者数,ならびに当該地域住民,当該自治体,看護職・司書等からの協力や連携等の問い合わせ件数の推移を調べた。結果:3年間の広報活動の内容は<知ってもらう宣伝>と<来てもらう催事>に大別され,<近所付き合い>から始め<町のキーパーソンとの連携>によって推進されていた。<知ってもらう宣伝>は,ポスターやチラシ,案内板や看板,地域の行事への参加,ホームページの活用で,イメージキャラクターを用い,サービス内容を選択して宣伝内容としていた。<来てもらう催事>はハーブティや抹茶のサービス,ランチタイムミニ健康講座・ミニコンサートの定期的催しであった。健康情報サービススポットの最も重要な活動である健康相談の月平均利用者は,2004年31.7名から2006年88.4名と増加し,2005年の相談者の12%がリピーターであった。宣伝媒体を受け入れている店舗数は2006年現在,ポスター掲示が31件,カードの設置が10件で,自治体や自治体内の諸機関からの連携依頼や専門職の見学もあった。考察:これらの結果から,健康情報サービススポットの利用者が増え,その存在が広く知られてきていることが確認でき,広報活動は有用であったと考える。大学と地域との連携や,広報活動の中での健康情報サービスの実施について考察した。
著者
長江 弘子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.33, pp.17-25, 2007-03

本研究は質的記述的研究であり,その目的は在宅移行期にある家族介護者が生活を立て直すプロセスについて明らかにすること,および家族介護者にとって安定した生活とは何かについて記述することである。家族介護者は初めて介護をする人で退院する病院と提携している訪問看護ステーションの利用者である。また,要介護者は退院後1年未満の65歳以上の高齢者で,家族介護者は同居家族とした。研究参加者は8名得られ,半構成的面接調査を実施した。分析の結果,家族介護者が生活を立て直すプロセスには4つのカテゴリーが見出された。それは【多重生活の調整と配分】【専門職との付き合い方の模索】【一人で格闘することから生まれる視野の拡大】【病人と向き合う】である。これら4つのカテゴリーは時間的経過を伴って変化し相互作用していた。その結果,家族介護者は【新しい自分の生活が回りだす】という感覚を得ていた。家族介護者はこのプロセスを通して,自分と他者との関わりを,時間や自分の気持ちを切り替えることによって,自分を取り戻し,自分のやり方を見出していた。これまで在宅移行期における家族介護者の生活を支援することは,生活の安定を取りもどすことであると理解されてきたが,それは専門家の見方であった。本研究の結果,彼らの生活認識は安定,不安定という状況ではなく,主体的に新しい生活の感覚を得ることであった。今後,家族介護者への適切な支援をするためには,家族介護者の生活の立て直しのプロセスを理解し,新しい生活で何をつくり出しているのかを明らかにする必要性が示唆された。
著者
那須 実千代
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-10, 2005-06-20

本研究は,看護職が音楽療法の要素をふまえたケアを生活の場の日常的な状況のなかで行いたいと考え,とれを「音楽体験を話題にしたケア」として入院患者を対象に試み,その看護ケアとしての可能性を探ることが目的である。音楽体験を話題にしたケアは,「患者と看護者の間で相互作用が築かれ,音楽体験を話題とした会話でのやりとりをする働きかけで,患者にイメージが想起されて気持ちが動き,喜びや満足感,安心感を伴う経験となり,個人のよりよく生きる活力と連関するもの」とした。具体的には,患者にとって「嬉しい」「楽しい」「好きである」音楽は何であるか,また「落ち着く」「穏やかになる」「安らぐ」音楽は何であるかを話題に自由なやりとりを行った。研究方法は,入院患者10名を対象に音楽体験を話題にしたケアを試み,その状況記述から横軸に経過時間,縦軸には会話のやりとりの関係性,気持ちを表す言葉,音楽行動,Visual Analogue Scaleを示すケア経過図を作成し,ケアの実際を検討した。音楽体験を話題にしたケアは,実施する場所や時間帯を選ばず,音楽を話題とした会話から,患者はイメージを想起している。話題となる音楽は,演歌,童謡,クラシックなどさまざまで,歌う,聴くなどの音楽行動が伴う。患者の話すエピソードは,幼少時から最近までのあらゆる体験からなり,患者にとっては人生の一時期や日常生活の振り返りの場となる。現在の身体状況よりも音楽の話題に関心が向き,快のほうへ気持ちが変化して,生きる活力を強める可能性をもつ。また,看護者は,患者の話すエピソードに共感し,心に寄り添えることから,このケアは看護実践の可能性をもつと示唆された。
著者
佐居 由美 松谷 美和子 山崎 好美 中山 久子 大久保 暢子 石本 亜希子 三森 寧子 多田 敦子 印東 桂子 瀬戸山 陽子 村松 純子 小山 敦子 岩辺 京子 森 明子 有森 直子 今井 敏子 原 瑞恵 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.116-124, 2007-06

本稿は,聖路加看護大学21世紀COEプログラムの一環である『第7回COE国際駅伝シンポジウム『子どもと学ぼう,からだのしくみ』の概要を記述し,その運営実施過程を分析評価することにより,People-centered Careの構成要素について考察することを目的とする。第7回駅伝シンポジウムは,5歳児がからだを学べる方法を提示し一般市民と有意義な意見交換を行うことを目的とし,5歳児と両親,保育士や幼稚園教諭,看護師・養護教諭など5歳児にかかわる専門家を対象として開催された。シンポジウムの企画運営は市民との協働で行われた。シンポジウムは,(1)子どもが「からだを学ぶ」ための教材としてのテーマソング「からだフ・シ・ギ」の歌と踊り,(2)人間の消化機能を解説した紙芝居「リンゴがウンチになるまで」の上演,(3)子どもとからだのしくみを学ぶことについてのシンポジウム「子どもと学ぼう,からだのしくみ」から構成された。プログラムは,1プログラム20分以内とし,紙芝居・歌・踊りなどを取り入れ,子どもが飽きない工夫を行った。シンポジウムの運営実施における市民との協働過程においては,これまでのCOE活動から得られたPeople-centered Careの要素〔役立つ健康情報の生成〕〔異なる視線でのつながり〕等が確認され,「コミュニティに潜伏しているニードを湧きあがらせ(互いに確認し)顕在化させ,活動を専門家との協働へと移行し発展させる」過程を経験し,新たに〔互いに確認する過程〕という要素を見いだした。また,駅伝シンポジウムにおいて,当初,模索されていた市民との協働(2004年)が,湧きあがったコミュニティとの協働(2005年)へと視点を移し,さらに,協働が進行しているコミュニティと専門家が活動のさらなる展開を共に模索するシンポジウム(2006年)へと,市民との協働のプロセスが発展していることが確認された。コミュニティとのさらなる協働のあり様,「5歳児がからだを学べる方法」の具体的評価方法,などが,今後の課題として再確認された。
著者
江上 京里
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.9-16, 2002-06-30
被引用文献数
4

本研究は、健康な20代の男性16名からなる被験者にクレペリン検査を用いた計算作業による負荷を与え、負荷からの回復過程において腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施し、交感神経活動及び主観的な快さがどう変化するのかを明らかにしたものである。便宜的標本抽出法による準実験研究デザインで、同一被験者に、腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施する実験群と実施しない対照群を設けた。交感神経活動の測定には、皮膚電気活動(electrodermal activity : EDA)として皮膚電気抵抗水準(skin resistance level : SRL)と皮膚電気伝導水準(skin conductance level : SCL)、平均皮膚温を用い、快さの測定には日本語版UMACLを使用した。分析の結果、実験群の平均皮膚温は対照群に比べて、腰背部蒸しタオル温罨法ケア終了後、負荷で上昇していた状態から基準値までの回復が有意に早かった。また腰背部蒸しタオル温罨法ケア中のSRLは有意に大きく、主観的快さが生じ、主観的緊張感が低下していた。しかしSCLでは有意差は認められなかった。よって、腰背部蒸しタオル温罨法ケアは従来いわれているように皮膚温を上昇させるばかりではなく、低下させるものでもあるといえる。しかも皮膚温が低下した実験群には快さが生じている。このことは腰背部蒸しタオル温罨法ケアは皮膚温の一定方向の変化をもたらすのではなく、低ければ高く、高ければ低くするという当人の快い状態を作る調節能を促進している可能性を示唆している。
著者
佐居 由美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-9, 2004-03
被引用文献数
1

看護において,「安楽」という用語は「安全」と共に看護の目的とされ,実践場面においても看護目標としても多用されている言葉である。だが,「安楽」という用語は抽象的であり,研究者は看護者によってその意味するところが異なるという体験がしばしばあった。そこで,本研究においては,看護領域において用いられている「安楽」という用語を,実践場面で使用されている側面から検討し,その意味するところを明らかにすることとした。このことは,看護識者が「安楽」なケアの提供を意識化し,概念化する手がかりとなる。本研究の対象は,内科系外科系病棟看護師29名であり,質問紙を用いた半構成的面接法を行った。分析の視点は,Rodgersによる概念分析の方法に準拠し,『定義(Definition),先行するもの(Antecedents),帰結(Consequences),代替となる用語(Alternative Terms),関連する概念(Related Concept)』の5つの枠組を採用した。半構成的面接法によって得られた記述データを,Rodgersの5つの枠組毎に分析して,内容を抽出(原データ)し,その内容を要約した題目をつけ(コーディング1),更にそれらを類型化(コーディング2)した。その結果,29名の看護師から,29通りの「安楽」の定義が示された。「安楽」に"先行するもの"は,患者に関するものとして「苦痛」「不快」「不安]「環境」等が,看護師に関するものとして「安全」「看護技術」等が抽出された。「安楽」の"帰結"としては、「患者の満足」「自然治権力を高める」などが抽出された。"「安楽」の意味するもの"を, "「安楽」に先行するもの"を用いて,構造化した。看護師が患者により安楽なケアを提供するには,この構造図の要素を充実・強化する必要があることが示唆され,看護実践場面における「安楽」という用語の意味は,この構造図の範囲内において説明でき,連想されることが示された。
著者
横山 美樹 小澤 道子 香春 知永 大久保 暢子 佐居 由美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.29, pp.40-46, 2003-03
被引用文献数
1

本学では現在,2年次に看護における基礎技術であるフィジカルアセスメント技術,基礎看護援助技術に開しての科目を開講し,2年終了時に5日間の基礎実習(臨地実習)を行っている。技術に関しては,実施・経験の有無が習得に大きく関係するため,今回学生が初めての基礎実習で既習のフィジカルアセスメント技術,看護援助技術をどの程度実施しているのか,また自己評価をどのように行っているのかの実態調査を行った。167名に調査を依頼し139名から回答を得た。その結果,以下のことが明らかになった。1.フィジカルアセスメント技術に関して:バイタルサインは全員が行っており,自己評価も高かった。その他の項目では,胸部・肺の視診,聴診,腹部のアセスメントが多く行われていた。自己評価は全体に3以上と高かったが,心臓のアセスメント,筋骨格系,神経系のアセスメントで低い傾向であった。2.看護援助技術に関して:環境整備,ベッドメーキングは全員が実施していた。その他寝衣交換,陰部洗浄,移動,オムツ交換,全身清拭,体位変換等日常生活援助の項目の実施率が多かった。逆に処置系の項目は実施率が少なかった。自己評価に関しては,どの項目も平均3以上と高かったが,清潔の援助,排泄の援助,体位変換,移動等が低い傾向であった。今回の結果より,できるだけ学生が自分の技術に対して客観的な自己評価を行えるような教員側のフィードバック,また限られた臨床実習期間で基礎看護援助技術をより実施・体験できるような工夫が必要だと考える。
著者
亀井 智子 友安 直子 梶井 文子 久代 和加子 杉本 知子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-37, 2006-06-20
被引用文献数
2

本研究の目的は,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質を評価する枠組みの開発を行うことである。方法は,データベースによる文献検索から24文献,ハンドサーチから20文献,計44文献を国内外から収集し,それらの要約と統合を行い,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチによる成果(outcome)に基づく質評価の枠組みを作成した。さらにその妥当性の検討のために,計16名の保健医療福祉の各専門職実践家にインタビュー調査を行った。文献の統合により,outcome評価の具体的項目を分類し,抽象度を上げていき,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質評価の大・中・小項目にわたる枠組みを作成した。その結果,質評価枠組みの大項目は,次の9項目の大項目で構成されるものとなった。「I.認知障害と記憶障害とともに生きること」「II.認知と記憶の状況が見守られること」「III.認知と記憶障害に関連する問題を解決すること」「IV.活動的であること」「V.認知症以外の合併症のリスクを減らすこと」「VI.決定する力をもつこと」「VII.意思疎通できること」「VIII.活動と参加の能力を促進すること」「IX.心地よくあること」。また,各々の中・小項目では,在宅認知症高齢者の日常生活全般にわたる医学面,生活行動・活動,心身の機能,コミュニケーション,生活の質(QOL)などの側面が含まれ,日常生活全般にわたり認知症高齢者が前向きに生活する姿をoutcomeとしてケアの質を評価するものとなった。専門職へのインタビュー結果から,この枠組みは支持された。しかし,在宅認知症ケアの実践現場において質評価上不可欠とされたのはケアマネジメントの視点であることが共通にあげられ,最終的に「X.ケアマネジメントされること」を加えた10項目の大項目で構成される枠組みが作成された。今後,各々の質評価の柱に沿った具体的なケア内容,評価指標と時期,職種ごとのケアの専門性について具体化することが必要である。
著者
小野 智美 及川 郁子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

本研究は、日帰り手術に向けての幼児の自律性を親と協働して支援する看護介入プログラムの有用性を検証するために、効果研究の研究枠組みを構築することを目指すものである。具体的には、本プログラムの成果指標として、先行研究の過程で作成した2 つの質問紙について、その内容と質を検討して改善した。これまでの研究過程で得られた情報から、上記の2 つの質問紙と手術終了3 時間後までの子どもの苦痛、子どもの経表皮水分喪失量を成果変数に選定した研究枠組みを提案した。
著者
小澤 道子 森 明子 久代 和加子 桃井 雅子 片桐 和子 堀内 成子 園城寺 康子 菊田 文夫
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.28, pp.39-49, 2002-03
被引用文献数
1

本学は1995年度入学生より,改訂カリキュラムを採用した。改訂カリキュラムの特徴として,自学自習能力の育成,統合化学習の推進,科目配置の順序性があげられる。本報告は,改訂カリキュラム導入期の3年間における卒業時点での学生側から見たカリキュラムの満足度と教科カリキュラムの順序性,統合性に対する評価の推移を知ることを目的とした。調査方法は,調査日を卒業式前日とし,質問紙を配布しその場で回収をした。質問紙の構成は,教科カリキュラムの統合性を知るために「総合看護・看護研究II」と履修した科目との関連,教科目の順序性,カリキュラムの満足の度合,授業や教育システム,教育支援に対する評価などである。その結果は,次の如くである。(1)『総合看護・看護研究II』(いわゆる卒業論文)にこれまで履修した教養科目・基礎科目・専門科目の,各科目の関連のあるものを科目の出現率で検討すると,3年間とも基礎科目と専門科目の出現率が高く,教科カリキュラムの統合性が支持されていると解釈できる。(2)改訂カリキュラムでは,看護へめ高い志向をもつ学生に,あえて1年次では,教養科目に力を入れる科目配置にした。しかし3年間とも学生は,入学次から看護学の科目を求めていた。入学年次に教養科目と看護学の科目をどのように配置していくのかが課題として残された。(3)カリキュラム全体に対する満足度は,3年間ともその高い順に「総合看護i看護研究H」,「専門科目群」,「実習科目群」であり,全体の平均は,5段階の4:「やや満足」から3:「どちらでもない」の間に分布じた。(4)カリキュラム運用に間しては,「専門的知識が身につく」「自分の視野を広げるのに役立つ授業が多い」等が3年間ともに肯定的回答が高く,また,「本学の学生として経験したことは肯定的にとらえている」とした学生は,9割以上を占めていた。一方,「情報処理関係の教育が充実している」には,否定的回答が年次毎に徐々に増加していた。今後とも加速的に変化する情報技術革命に対する設備投資という大きな側面と,日常的な維持管理への対応の側面の両面からの取り組みが急務な課題であろう。以上,カリキュラムの受け手である学生側の3年間の評価は,一部に年次差が見られたが,総じて,カリキュラムの統合性と順序生が受け入れられ,満足できるものとして示された。そして,より実効あるカリキュラムのためには,このような評価活動の重要性が再認識された。
著者
有森 直子 小松 浩子 長江 弘子 太田 加代 横山 由美 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.84-89, 2005-06-20

本稿の目的は,People-Centered Careというテーマをシンポジウムという形態で企画・運営から実施まで試みた市民と医療者の「協働」のプロセスおよびその企画担当者(医療者)の経験内容を帰納的に記述することである。方法は,駅伝シンポジウム企画運営委員会の議事録・配布資料をデータとして,企画運営のプロセスおよび,医療者と市民の協働について内容分析を行った。結果は,企画のための会議は15回(計28時間)もたれた。医療者が市民と「協働」することの模索におけるスタートの段階では,いかにしてこの活動(シンポジウム)を広報するか(プロモーション)に力点がおかれロゴおよびキャッチコピーの作成などがなされた。またボランティアとともにシンボルキルトの作成をシンポジウムの開催期間に行った。各シンポジウムにおいては,前回のシンポジウムの改善点を次回に生かして,プログラムの工夫がなされた。People-CenteredCareを基盤とした市民との協働における一連のプロセスにおいて医療者の企画担当者は,(1)メインテーマの再確認,(2)「市民を巻き込む」方略の模索,(3)市民に対してわかりやすく説明する努力,(4)People-Centered Careとシンポジウムの目標の再検討,(5)シンポジウムの成果の発信方法の検討,(6)医療者が市民から「教わる」経験をしていた。シンポジウムは第1回「あなたはどこで最期を迎えたいですか」,第2回「考えよう!医療と看護-あなたも医療チームの一員-」,第3回「自分で決めた生き方を実践するために」をテーマに開催された。160〜320名の参加者があり,その4割は医療職であった。性別は,8割が女性であった。評価項目の(1)テーマとニーズの合致性,(2)シンポジウムの政策提言性,(3)国際的情報発信の適正については外部評価者(有識者)よりも参加者の評価のほうが高かった。
著者
長松 康子 田代 順子 菱沼 典子 松谷 美和子 及川 郁子 麻原 きよみ 平林 優子 大森 純子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.62-67, 2007-06

ボランティア活動の一領域である海外ボランティアに焦点をあて,サービスラーニングカリキュラム作成に必要な情報と支援策について資料を得るため,タイ国でのボランティア活動に参加する看護学生が直面する困難と,その解決のために有効な情報や支援,および,海外ボランティア受け入れ担当者が望む情報・支援について調査を行った。調査は,タイ国ボランティア活動に参加したA看護大学4年生8名に対し,活動終了後にフォーカスグループディスカッションを,タイ国B大学看護学担当教員4名に英語によるアンケートを実施した。ボランティア活動は,タイ中心部のスラム地区の小学校スクールナース活動,在宅ケア,デング熱キャンペーン,ナースクリニック,孤児院で実施された。事前準備として,タイの文化・習慣・宗教,ヘルスシステムや健康問題,基本的なタイ語挨拶などを実施し,それらは概ね役立った。しかし,それでも学生は(1)文化・言語:道に放置されるゴミや野犬,スタッフの説明が理解できない,(2)ボランティアとしての参加の仕方:見学だけか,ケアしてもよいのか,(3)心理面:孤児との別れの辛さ,異文化生活における精神的疲労,(4)看護ケア:日本と異なる方法,などの困難を経験していた。これらに対しては現地で,日々の振り返り,学生同士のディスカッション,教員やスタッフによるスーパーバイズなどの支援を行い,有効であった。一方,現地担当者は,スケジュールや食事に対する学生の要望や学生の看護知識・技術についての情報を求めていた。さらに,事前学習の指導や現地での学生の支援を日本の教員に期待していた。これらは,サービスラーニングで提供する海外ボランティア活動の情報に反映することが可能であると考える。