- 著者
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那須 実千代
- 出版者
- 聖路加看護大学
- 雑誌
- 聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.1, pp.1-10, 2005-06-20
本研究は,看護職が音楽療法の要素をふまえたケアを生活の場の日常的な状況のなかで行いたいと考え,とれを「音楽体験を話題にしたケア」として入院患者を対象に試み,その看護ケアとしての可能性を探ることが目的である。音楽体験を話題にしたケアは,「患者と看護者の間で相互作用が築かれ,音楽体験を話題とした会話でのやりとりをする働きかけで,患者にイメージが想起されて気持ちが動き,喜びや満足感,安心感を伴う経験となり,個人のよりよく生きる活力と連関するもの」とした。具体的には,患者にとって「嬉しい」「楽しい」「好きである」音楽は何であるか,また「落ち着く」「穏やかになる」「安らぐ」音楽は何であるかを話題に自由なやりとりを行った。研究方法は,入院患者10名を対象に音楽体験を話題にしたケアを試み,その状況記述から横軸に経過時間,縦軸には会話のやりとりの関係性,気持ちを表す言葉,音楽行動,Visual Analogue Scaleを示すケア経過図を作成し,ケアの実際を検討した。音楽体験を話題にしたケアは,実施する場所や時間帯を選ばず,音楽を話題とした会話から,患者はイメージを想起している。話題となる音楽は,演歌,童謡,クラシックなどさまざまで,歌う,聴くなどの音楽行動が伴う。患者の話すエピソードは,幼少時から最近までのあらゆる体験からなり,患者にとっては人生の一時期や日常生活の振り返りの場となる。現在の身体状況よりも音楽の話題に関心が向き,快のほうへ気持ちが変化して,生きる活力を強める可能性をもつ。また,看護者は,患者の話すエピソードに共感し,心に寄り添えることから,このケアは看護実践の可能性をもつと示唆された。