著者
野家 啓一
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.50-51, 2004-06-23
著者
菱沼 典子 石川 道子 高橋 恵子 松本 直子 鈴木 久美 内田 千佳子 金澤 淳子 吉川 菜穂子 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.76-82, 2007-06
被引用文献数
1 1

目的:大学内に市民が立ち寄り活用できる健康情報サービススポットが開設されて3年目になる。この健康情報サービススポットの広報活動が,利用者の増加に有用であったかどうかを検討し,今後の広報活動への示唆を得ることを目的に本研究を行った。方法:調査対象期間は2004年4月〜2006年12月であり,健康情報サービススポットの記録と,研究者間での振り返りからデータを収集した。広報活動を時間軸に沿って整理し,来訪者数,リピーター,健康相談者数,ならびに当該地域住民,当該自治体,看護職・司書等からの協力や連携等の問い合わせ件数の推移を調べた。結果:3年間の広報活動の内容は<知ってもらう宣伝>と<来てもらう催事>に大別され,<近所付き合い>から始め<町のキーパーソンとの連携>によって推進されていた。<知ってもらう宣伝>は,ポスターやチラシ,案内板や看板,地域の行事への参加,ホームページの活用で,イメージキャラクターを用い,サービス内容を選択して宣伝内容としていた。<来てもらう催事>はハーブティや抹茶のサービス,ランチタイムミニ健康講座・ミニコンサートの定期的催しであった。健康情報サービススポットの最も重要な活動である健康相談の月平均利用者は,2004年31.7名から2006年88.4名と増加し,2005年の相談者の12%がリピーターであった。宣伝媒体を受け入れている店舗数は2006年現在,ポスター掲示が31件,カードの設置が10件で,自治体や自治体内の諸機関からの連携依頼や専門職の見学もあった。考察:これらの結果から,健康情報サービススポットの利用者が増え,その存在が広く知られてきていることが確認でき,広報活動は有用であったと考える。大学と地域との連携や,広報活動の中での健康情報サービスの実施について考察した。
著者
今村 朋子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.68-75, 2007-06

目的助産所から病院への搬送事例について,助産師と女性双方の立場から,そのプロセスを明らかにすることにより,搬送事例における助産ケアのあり方を考える。対象と方法分娩期に助産所から病院へ搬送となった3事例について,女性3名と担当した開業助産師3名を対象に,参加観察法と半構成的面接法によりデータを収集し,アウトカムモデルに沿って各事例を質的に分析した。結果事例A:37週の前期破水時に低体重児が指摘され,搬送となった。助産師は,Aさんが搬送に納得し,自己決定していくための,時間や環境の提供などのケアをおこなった。Aさんは,『病院での出産は,児の安全のためにも,自分の人生にとっても必要だった』と意味づけ,自分のお産を受け入れる気持ちに至った。事例B:遷延分娩で搬送となった。助産師は早い段階から分娩遷延を予測し,Bさんの反応を確認しながら,「安全と納得が両立できる搬送時期を模索」していた。分娩経過の中で,助産師とともに模索の時間を過ごしたことで,Bさんは『一つ一つ納得しながら進むことができ,いいお産だったと思える』と評価した。事例C:回旋異常による分娩停止で搬送となった。情報理解について助産師とのズレが存在し,Cさんの意思が尊重されないままの状況の中で搬送が決定された。この出産体験についてCさんは,満足いく出産体験であったと語ることはできなかった。結論女性たちは,搬送という状況の中にあっても,安全以上の結果を望み,満足いく出産俐験に向けて取り組んでいた。開業助産師は,「早めの搬送により母子の安全・安心を守るケア」に加えて,出産体験の満足度を高められるよう,「女性が搬送に納得する過程を支えるケア」「搬送で生じる変化を最小限にとどめるケア」「出産への主体性を保ち続けることを支えるケア」「助産所とのつながりを保障するケア」などの助産ケアをおこなうことが重要である。
著者
大久保 暢子 雨宮 聡子 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.58-63, 2001-06-30
被引用文献数
3

意識障害患者に対する意識レベルの改善をめざした看護ケアの一つに、背面開放端座位ケアがある。背面開放端座位は背面を支持せず、背筋を伸ばし脊柱の自然なカーブを損なわないで、足底を接地した姿勢であり、補助具が開発されている。くも膜下出血および脳内出血後の遷延性意識障害患者1例に、入院中および在宅での訪問看護で補助具を用いた背面開放端座位ケアを行い、意識レベルの改善に背面開放端座位が関与している示唆を得たので報告する。意識レベルの測定には、東北療護センター遷延性意識障害度スコア(以下広南スコアと称す)を用いた。事例は78歳の女性で、入退院と訪問看護による在宅での療養生活を送ることで背面開放端座位ケアが提供される時期、されない時期を繰り返すことになった。初回の背面開放端座位ケアは、入院中で遷延性意識障害と診断されて4ヶ月後から退院までの5週間であり、2回目は退院後10日を経た後からの7週間であった。初回導入前の広南スコアは61〜64点(重症例)で、毎日、1日2回の背面開放端座位ケアを導入して広南スコアは徐々に低下し、5週目に54点(中等例)まで回復した。退院後10日間の寝たきり状態で、スコアは背面開放端座位ケア導入前と同程度の64点(重症例)に戻っていた。再度、背面開放端座位ケアを週3回1日1回ずつ開始したところ、2週目で51点(中等例)に改善を示し、ケア継続中はその点数を維持していた。ケアを施行した期間は長期にわたり、他の要因に変化があった可能性はあるが、医学的治療には変化がなく、在宅への移行は大きな環境の変化であったが、スコアが上がる結果となり、環境変化よりも寝たきりになったことが、意識障害度に変化を与えたものと考える。背面開放端座位ケアの施行に関し、その開始時期や継続性、1日の回数等、検討課題が残されたが、今後さらに事例検討を重ねて、背面開放端座位ケアの意識回復への効果を検証していきたい。
著者
佐居 由美 松谷 美和子 山崎 好美 中山 久子 大久保 暢子 石本 亜希子 三森 寧子 多田 敦子 印東 桂子 瀬戸山 陽子 村松 純子 小山 敦子 岩辺 京子 森 明子 有森 直子 今井 敏子 原 瑞恵 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.116-124, 2007-06

本稿は,聖路加看護大学21世紀COEプログラムの一環である『第7回COE国際駅伝シンポジウム『子どもと学ぼう,からだのしくみ』の概要を記述し,その運営実施過程を分析評価することにより,People-centered Careの構成要素について考察することを目的とする。第7回駅伝シンポジウムは,5歳児がからだを学べる方法を提示し一般市民と有意義な意見交換を行うことを目的とし,5歳児と両親,保育士や幼稚園教諭,看護師・養護教諭など5歳児にかかわる専門家を対象として開催された。シンポジウムの企画運営は市民との協働で行われた。シンポジウムは,(1)子どもが「からだを学ぶ」ための教材としてのテーマソング「からだフ・シ・ギ」の歌と踊り,(2)人間の消化機能を解説した紙芝居「リンゴがウンチになるまで」の上演,(3)子どもとからだのしくみを学ぶことについてのシンポジウム「子どもと学ぼう,からだのしくみ」から構成された。プログラムは,1プログラム20分以内とし,紙芝居・歌・踊りなどを取り入れ,子どもが飽きない工夫を行った。シンポジウムの運営実施における市民との協働過程においては,これまでのCOE活動から得られたPeople-centered Careの要素〔役立つ健康情報の生成〕〔異なる視線でのつながり〕等が確認され,「コミュニティに潜伏しているニードを湧きあがらせ(互いに確認し)顕在化させ,活動を専門家との協働へと移行し発展させる」過程を経験し,新たに〔互いに確認する過程〕という要素を見いだした。また,駅伝シンポジウムにおいて,当初,模索されていた市民との協働(2004年)が,湧きあがったコミュニティとの協働(2005年)へと視点を移し,さらに,協働が進行しているコミュニティと専門家が活動のさらなる展開を共に模索するシンポジウム(2006年)へと,市民との協働のプロセスが発展していることが確認された。コミュニティとのさらなる協働のあり様,「5歳児がからだを学べる方法」の具体的評価方法,などが,今後の課題として再確認された。
著者
那須 実千代
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-10, 2005-06-20

本研究は,看護職が音楽療法の要素をふまえたケアを生活の場の日常的な状況のなかで行いたいと考え,とれを「音楽体験を話題にしたケア」として入院患者を対象に試み,その看護ケアとしての可能性を探ることが目的である。音楽体験を話題にしたケアは,「患者と看護者の間で相互作用が築かれ,音楽体験を話題とした会話でのやりとりをする働きかけで,患者にイメージが想起されて気持ちが動き,喜びや満足感,安心感を伴う経験となり,個人のよりよく生きる活力と連関するもの」とした。具体的には,患者にとって「嬉しい」「楽しい」「好きである」音楽は何であるか,また「落ち着く」「穏やかになる」「安らぐ」音楽は何であるかを話題に自由なやりとりを行った。研究方法は,入院患者10名を対象に音楽体験を話題にしたケアを試み,その状況記述から横軸に経過時間,縦軸には会話のやりとりの関係性,気持ちを表す言葉,音楽行動,Visual Analogue Scaleを示すケア経過図を作成し,ケアの実際を検討した。音楽体験を話題にしたケアは,実施する場所や時間帯を選ばず,音楽を話題とした会話から,患者はイメージを想起している。話題となる音楽は,演歌,童謡,クラシックなどさまざまで,歌う,聴くなどの音楽行動が伴う。患者の話すエピソードは,幼少時から最近までのあらゆる体験からなり,患者にとっては人生の一時期や日常生活の振り返りの場となる。現在の身体状況よりも音楽の話題に関心が向き,快のほうへ気持ちが変化して,生きる活力を強める可能性をもつ。また,看護者は,患者の話すエピソードに共感し,心に寄り添えることから,このケアは看護実践の可能性をもつと示唆された。
著者
島津 太一
出版者
聖路加看護学会
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.41-44, 2020-01-31
著者
岡永 真由美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.10-16, 2001-06-30

本研究は健康な生活を営む女性がこの子どもが最後ということに関わる状況を探索し、家族計画指導をはじめとする助産ケアに示唆を得ることを目的とした。対象者は避妊を中断することによって自然に妊娠し、出産後1年を越え、末子が小学校を卒業するまでの女性で、この子どもで最後と考えている女性とした。首都圏の自治体で活動する保健婦・助産婦に対象者の紹介を依頼し、文書と口頭にて研究協力の同意を得た11名の女性とした。半構成的面接による逐語録を継続比較法を参考として分析を行い、帰納的記述研究を行った。コアカテゴリーの【産まない性への心構え】には『妊娠しない可能性を信頼する』『妊娠に対する気持ちのゆらぎ』の2つのカテゴリーを抽出した。『妊娠しない可能性を信頼する』については《手軽な避妊》《性生活》という2つのサブカテゴリーを抽出した。『妊娠に対する気持ちのゆらぎ』には《授かれば産むと思う》《条件次第でもう1人欲しい》という2つのサブカテゴリーを抽出した。結論として、産まない性と向き合う女性と夫婦の思いを理解すること、夫婦を対象とした家族計画指導の中で夫婦の関係性としてのセクシュアリティを語り合う重要性が示唆された。
著者
小松 浩子 鈴木 久美 林 直子 村上 好恵 松崎 直子 冨田 美和 市川 和可子 外崎 明子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.61-67, 2006-06-20

本報告の目的は,21世紀COEプログラム事業の一環として継続的に実施している国際駅伝シンポジウムのうち,2005年10月に開催された第4回「私たちが選ぶ時代に向けて:患者中心の乳がんチーム医療」の企画・実施過程および評価を報告し,それらを通じてみえてきたPeople-Centered Careを生成するうえでの重要な要素について提示し,今後の課題を検討することである。方法は,シンポジウムの企画,実施,評価の全過程で記述した議事録や講演・討議内容,参加者のアンケート内容を資料とし,質的データは内容分析を,量的データは記述統計を行った。シンポジウムは,乳がん体験者と共に構成や内容,方法を検討し企画した。プログラムは,(1)参加者の医療ニーズを共に知ることをめざしたクイズ,(2)米国のチーム医療から学びをうる講演,(3)共にめざす乳がんチーム医療について広い視点から討議することをめざしたシンポジウム,(4)参加者と共に音とことばのメッセージを分かちあう詩の朗読と音楽演奏,そして(5)ピンクリボンにちなんだシンボルキルトの作成で構成された。その結果,参加者のニーズとテーマの合致性,シンポジウム成果の政策提言,有用性などシンポジウムの評価は全体的に高かった。そして,シンポジウムを通して,患者と医療者が互いに学び,歩み寄り,協働して医療に取り組む姿勢が重要であるといった,新しいチーム医療の方向性やあり方が示された。
著者
江上 京里
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.9-16, 2002-06-30
被引用文献数
4

本研究は、健康な20代の男性16名からなる被験者にクレペリン検査を用いた計算作業による負荷を与え、負荷からの回復過程において腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施し、交感神経活動及び主観的な快さがどう変化するのかを明らかにしたものである。便宜的標本抽出法による準実験研究デザインで、同一被験者に、腰背部蒸しタオル温罨法ケアを実施する実験群と実施しない対照群を設けた。交感神経活動の測定には、皮膚電気活動(electrodermal activity : EDA)として皮膚電気抵抗水準(skin resistance level : SRL)と皮膚電気伝導水準(skin conductance level : SCL)、平均皮膚温を用い、快さの測定には日本語版UMACLを使用した。分析の結果、実験群の平均皮膚温は対照群に比べて、腰背部蒸しタオル温罨法ケア終了後、負荷で上昇していた状態から基準値までの回復が有意に早かった。また腰背部蒸しタオル温罨法ケア中のSRLは有意に大きく、主観的快さが生じ、主観的緊張感が低下していた。しかしSCLでは有意差は認められなかった。よって、腰背部蒸しタオル温罨法ケアは従来いわれているように皮膚温を上昇させるばかりではなく、低下させるものでもあるといえる。しかも皮膚温が低下した実験群には快さが生じている。このことは腰背部蒸しタオル温罨法ケアは皮膚温の一定方向の変化をもたらすのではなく、低ければ高く、高ければ低くするという当人の快い状態を作る調節能を促進している可能性を示唆している。
著者
亀井智子 友安 直子 梶井 文子 久代 和加子 杉本 知子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-36, 2006
被引用文献数
2

本研究の目的は,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質を評価する枠組みの開発を行うことである。方法は,データベースによる文献検索から24文献,ハンドサーチから20文献,計44文献を国内外から収集し,それらの要約と統合を行い,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチによる成果(outcome)に基づく質評価の枠組みを作成した。さらにその妥当性の検討のために,計16名の保健医療福祉の各専門職実践家にインタビュー調査を行った。文献の統合により,outcome評価の具体的項目を分類し,抽象度を上げていき,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質評価の大・中・小項目にわたる枠組みを作成した。その結果,質評価枠組みの大項目は,次の9項目の大項目で構成されるものとなった。「I.認知障害と記憶障害とともに生きること」「II.認知と記憶の状況が見守られること」「III.認知と記憶障害に関連する問題を解決すること」「IV.活動的であること」「V.認知症以外の合併症のリスクを減らすこと」「VI.決定する力をもつこと」「VII.意思疎通できること」「VIII.活動と参加の能力を促進すること」「IX.心地よくあること」。また,各々の中・小項目では,在宅認知症高齢者の日常生活全般にわたる医学面,生活行動・活動,心身の機能,コミュニケーション,生活の質(QOL)などの側面が含まれ,日常生活全般にわたり認知症高齢者が前向きに生活する姿をoutcomeとしてケアの質を評価するものとなった。専門職へのインタビュー結果から,この枠組みは支持された。しかし,在宅認知症ケアの実践現場において質評価上不可欠とされたのはケアマネジメントの視点であることが共通にあげられ,最終的に「X.ケアマネジメントされること」を加えた10項目の大項目で構成される枠組みが作成された。今後,各々の質評価の柱に沿った具体的なケア内容,評価指標と時期,職種ごとのケアの専門性について具体化することが必要である。
著者
有森 直子 小松 浩子 長江 弘子 太田 加代 横山 由美 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.84-89, 2005-06-20

本稿の目的は,People-Centered Careというテーマをシンポジウムという形態で企画・運営から実施まで試みた市民と医療者の「協働」のプロセスおよびその企画担当者(医療者)の経験内容を帰納的に記述することである。方法は,駅伝シンポジウム企画運営委員会の議事録・配布資料をデータとして,企画運営のプロセスおよび,医療者と市民の協働について内容分析を行った。結果は,企画のための会議は15回(計28時間)もたれた。医療者が市民と「協働」することの模索におけるスタートの段階では,いかにしてこの活動(シンポジウム)を広報するか(プロモーション)に力点がおかれロゴおよびキャッチコピーの作成などがなされた。またボランティアとともにシンボルキルトの作成をシンポジウムの開催期間に行った。各シンポジウムにおいては,前回のシンポジウムの改善点を次回に生かして,プログラムの工夫がなされた。People-CenteredCareを基盤とした市民との協働における一連のプロセスにおいて医療者の企画担当者は,(1)メインテーマの再確認,(2)「市民を巻き込む」方略の模索,(3)市民に対してわかりやすく説明する努力,(4)People-Centered Careとシンポジウムの目標の再検討,(5)シンポジウムの成果の発信方法の検討,(6)医療者が市民から「教わる」経験をしていた。シンポジウムは第1回「あなたはどこで最期を迎えたいですか」,第2回「考えよう!医療と看護-あなたも医療チームの一員-」,第3回「自分で決めた生き方を実践するために」をテーマに開催された。160〜320名の参加者があり,その4割は医療職であった。性別は,8割が女性であった。評価項目の(1)テーマとニーズの合致性,(2)シンポジウムの政策提言性,(3)国際的情報発信の適正については外部評価者(有識者)よりも参加者の評価のほうが高かった。
著者
長松 康子 田代 順子 菱沼 典子 松谷 美和子 及川 郁子 麻原 きよみ 平林 優子 大森 純子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.62-67, 2007-06

ボランティア活動の一領域である海外ボランティアに焦点をあて,サービスラーニングカリキュラム作成に必要な情報と支援策について資料を得るため,タイ国でのボランティア活動に参加する看護学生が直面する困難と,その解決のために有効な情報や支援,および,海外ボランティア受け入れ担当者が望む情報・支援について調査を行った。調査は,タイ国ボランティア活動に参加したA看護大学4年生8名に対し,活動終了後にフォーカスグループディスカッションを,タイ国B大学看護学担当教員4名に英語によるアンケートを実施した。ボランティア活動は,タイ中心部のスラム地区の小学校スクールナース活動,在宅ケア,デング熱キャンペーン,ナースクリニック,孤児院で実施された。事前準備として,タイの文化・習慣・宗教,ヘルスシステムや健康問題,基本的なタイ語挨拶などを実施し,それらは概ね役立った。しかし,それでも学生は(1)文化・言語:道に放置されるゴミや野犬,スタッフの説明が理解できない,(2)ボランティアとしての参加の仕方:見学だけか,ケアしてもよいのか,(3)心理面:孤児との別れの辛さ,異文化生活における精神的疲労,(4)看護ケア:日本と異なる方法,などの困難を経験していた。これらに対しては現地で,日々の振り返り,学生同士のディスカッション,教員やスタッフによるスーパーバイズなどの支援を行い,有効であった。一方,現地担当者は,スケジュールや食事に対する学生の要望や学生の看護知識・技術についての情報を求めていた。さらに,事前学習の指導や現地での学生の支援を日本の教員に期待していた。これらは,サービスラーニングで提供する海外ボランティア活動の情報に反映することが可能であると考える。
著者
福田 紀子 有森 直子 武田 后世 丸山 彩香 勝良 泰子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.18-24, 2008-03

本研究の目的は,働く女性が,自らの健康づくりに必要な情報をどのように集め,どのように活用しているかという情報探索行動を明らかにすることである。都内にある事業所3社から7名の女性が研究参加者となった。1グループ3〜4人のフォーカス・グループ・インタビューを2回実施し,情報探索行動に関するデータ収集を行った。インタビュー内容の逐語録を,vaughnら(1996)の手法をもとに帰納的に分析し,情報探索行動に関わるカテゴリーを抽出した。分析の結果,1)心身への気づき・気づかい,2)情報へのアクセスとキャッチ,3)情報の活用,の3つのカテゴリーと,それぞれのサブカテゴリーが抽出された。本結果から,女性が心身への気づきや理解を深め,健康情報の賢い活用者としての能力を高められるような支援の必要性が示唆された。
著者
佐々木 空美 長松 康子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-32, 2008-03
被引用文献数
2

【序論】在日外国人は200万人を超え,医療面での対応が急務とされている。インターネットは安価で簡単に情報を得ることができる。そこで本研究では,自治体のホームページの外国人向け医療情報の提供状況を明らかにすることを目的とした。【方法】2000年度国勢調査において,外国人人口が1万人を超える17自治体を対象とし,そのホームページを,使用外国語・情報量・操作しやすさの3点で評価した。さらに,外国人人口,外国人割合,連携機関の有無についての関連を調べた。【結果】17すべての自治体がホームページを有していた。予算が多く,外国人が多い自治体ほど情報量が豊富で,外国人割合の多い自治体ほど外国版ホームページは操作しやすい傾向があった。使用している外国語は,英語が最も多く,次いで韓国語,中国語,ポルトガル語であった。13件(76%)が外国語の医療情報を掲載し,医療サービスシステム,日本の保険制度,母子保健等の情報を載せていた。外国語のできるスタッフのいる医療機関や電話による外国語医療相談を紹介する自治体もあった。【考察】人口の多い外国語については概ねホームページの外国語に取り入れられていた。しかし人口が多いにもかかわらずタイ語を用いているホームベージがないことは問題である。外国人人口の多い自治体ほど外国版医療情報が充実していたのは,ニーズに対応した結果と思われる。【結論】すべての自治体がホームページを有し,76%が外国語医療情報を提供していた。