著者
三浦 知之 森 和也
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.47-63, 2008-01

宮崎港の北に位置する9.6haの一ツ葉入り江に出現する鳥類について、これまで1年間の調査による出現種の結果を報告したが、本報では出現鳥類の季節的消長と摂餌生態を報告するとともに、入り江を繁殖地とするコアジサシの営巣の状況と営巣地保全に関する考察をおこなった。2002年から2007年まで、一ツ葉入り江において22科60種の鳥類の飛来が記録され、環境庁レッドデータブックで絶滅危惧I類CRのクロツラヘラサギ、絶滅危惧II類VUのズグロカモメ、コアジサシ、セイタカシギ、アカアシシギ、ホウロクシギおよび準絶滅危惧NTチュウサギ、ミサゴ、カラシラサギが確認された。同記載種であるコアジサシは、2002年、2004年、2006年および2007年に営巣した。留鳥はチドリ科のシロチドリ、サギ科のコサギ、ダイサギ、アオサギおよびカラス科のハシボソガラス、シギ科のイソシギ、カワセミ科のカワセミ、タカ科のミサゴおよびサギ科のアマサギであった。他に非湿地性鳥類10種も出現した。シロチドリは入り江の砂嘴部で繁殖した。夏鳥としてはカモメ科のコアジサシ、アジサシ、クロハラアジサシ、ハジロクロハラアジサシおよびサギ科のササゴイの5種であった。冬鳥は、ガンカモ科のマガモを含む12種が記録された。旅鳥はシギ科のハマシギを含む18種が記録された。これらの鳥類に関して、糞あるいはペリットを排出直後に採取し、餌生物の分析を行った。特にシギ類は入り江の甲殻類や魚を良く捕食し、入り江で最も生息個体数の多いコメツキガニが糞やペリットに頻出した。コアジサシがほぼ毎年営巣していたが、特に2006年と2007年の観察を元に一ツ葉入り江のコアジサシ繁殖地としての可能性を考察した。営巣の攪乱要因としては、台風や大雨による水位の上昇および人・車・飼育動物の侵入の影響が大きく、人的攪乱をできるだけさけることが肝心であるが、自然災害に対しては営巣地の数を増やすことが唯一の対応策となろう。営巣地に必要な立地条件としては見通しの良い荒れ地であることが重要であり、草地化を防止し、砂利などを敷けば、一ツ葉入り江は数百規模の営巣が可能になると考える。

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