著者
森山 清徹
出版者
佛教大学文学部
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
no.90, pp.31-50, 2006-03

因果論に関し無常な自性を有する対象(因)の吟味に続く本稿で扱う常住な自性を有する対象(困)の吟味に於ても感官知、特に有形象知の点からは経量部説とされる対象の二条件に照合して論破され、さらに推理の点からは常住な自性を有するものの吟味の際の常套手段ともいい得るダルマキールティの刹那滅論の活用により論破される。しかしながらこのプラマーナを用いたカマラシーラの吟味は夕ルマキールティとは以下の点で異なる。ダルマキールティはプラマーナ(直接知覚と推理)を言語行為(vyavahara) によるが、結果的には効力を有する実在(vastu ,勝義有)を明らかにする整合した知であるとする。他方カマラシーラは、プラマーナを有という言語行為及び常、無常なる実在の自性を排除する無なる言語行為を明らかにする知とする。さらに無なる言語行為を証明する反所証拒斥検証(sadhyaviparyaye badhakapramana)により自、他、自他の二、無因からの四不生や離ー多性などを能遍の無知覚(vyapakanupalabdhi)因とし勝義無自性の論証として確立している。このプラマーナの意義や適用の仕方はダルマキールティとは異なっている。本稿で扱う因果関係と常、無常なる実在の自性に関して勝義として能遍(因果関係)の否定により所遍(実在の自性)の否定(無自性)を論理的必然関係として論じ、他方、対論者の実在を論じる推論は能遍の確定により所遍を確定するという過ちを犯している、なぜなら実在の自性が成立しなくとも因果関係はあり得る故、反所証拒斥検証が成立せず不定因であると退けている。またカマラシーラはプラマーナに段階的に限定された整合性を設け二諦説を設定する基準としている。カマラシーラダルマキールティ

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