著者
中島 善人
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.p540-586, 1992-01

地球内部物理学は現在、地磁気の原因やマントル対流のモード(2層対流か1層対流か)など多くの未解決問題をかかえている。これらの多くは地球深部への直接探査によって容易に解明できるであろう。そこで我々は、Core Projectという名称の地球内部の直接探査計画を提案する。Core Projectでは、探査船が地底を進み、地球深部の情報を地上に送信しながら、100年かかって地球中心核(the Earth's Core;地下2900km以深)に到達することを想定している。Core Projectを実行するにあたって発生する原理的な問題として、耐圧耐熱、推進、通信、エネルギー供給の4つがある。耐圧に関しては、最も効果的な耐圧原理を明らかにし、たとえば完全結晶のダイアモンドを使用すると耐圧球殻の外径内径比を2程度に抑えられることを示した。耐熱に関しては、肉厚100mの岩石で船を囲めば、マントルからの熱の侵入を100年間防ぐことができる。目標推進速度(2900km/100yr=1mm/s)は、船を半程数kmの鉄球にすると船の自重によるStokes沈降によって達成できる。通信に関しては、P波を使ったパルス幅10sの線形PCM通信を使うと0.1bit/s=3x10^6bit/yrの通信速度が可能である。また、探査活動(通信や観測など)のエネルギー供給手段としては原子力の他にも、船自身の一部を低温熱源、マントルを高温熱源とするカルノーサイクルが有望である。マントル物質のサンプリングを行わなければ、Core Projectは、原理的に実現可能である。その場合は、船内に搭載した地震計・重力計・磁力計・温度計・電気伝導度計などで情報を獲得することになる。それでも「マントル対流は、2層対流か1層対流か」「ダイナモモデルの検証」「外核対流の揺らぎ」「D"層の空間分布と組成」などの重要問題解明に貢献する貴重な情報を獲得できる。本研究は数百年後に行なわれるであろう地底探査に、必要不可欠な理論的基礎と展望を与えようとするものである。

言及状況

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こんな論文が (仕事しなさい https://t.co/uP1BBPevk1
地球の中心部へ行くためには、物理的に真面目に考えると以下の論文のようになります。さらに突き抜けてブラジルまで行くとなると… @fish8625 @mkuze https://t.co/GvkL5cmUri
地球の中心部へ行くためには、物理的に真面目に考えると以下の論文のようになります。さらに突き抜けてブラジルまで行くとなると… @fish8625 @mkuze https://t.co/GvkL5cmUri
“耐熱に関しては、肉厚100mの岩石で船を囲めば…熱の侵入を100年間防ぐことができる。目標推進速度2900km/100yr=1mm/sは、船を半程数kmの鉄球にすると船の自重によるStokes沈降によって達成できる” https://t.co/0mYF3aXBh3 うーん…
地球の中心部へ行く方法を真面目に考察した論文「Core Project」今こそ陽の目を見る時であろう https://t.co/GvkL5cmUri
@follow_against 過去の論文で最も驚いたのが http://t.co/UObegi3d 。 分野外のユニークな論文も載る柔軟さがあって、とても好きな学術誌でした。

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