著者
岡本 和子
出版者
大東文化大学
雑誌
大東文化大学紀要. 人文科学 (ISSN:03861082)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.A49-A65, 2007

本論文は、批評家ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)における「子ども」という形象が、彼の芸術理論の核心にある「言語」との関係において特殊な位置を占めていることを、後期の散文作品『ベルリンの幼年時代』に即して明らかにするものである。『ベルリンの幼年時代』は二つの言語獲得を描いた作品である。ひとつは、色という媒質において子どもが物と対峙することによって、音声言語と文字言語とが一体化した言語を獲得するさまであり、いまひとつは、みずからの幼年時代を回想する者が、その歴史を記述する言語を獲得するさまである。こうして獲得された言語こそが、『ベルリンの幼年時代』という作品そのものである。

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