著者
松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.57-67, 2007

カマキリ(チョウセンカマキリ)とオオカマキリの卵塊はセイタカアワダチソウに付いていることが多い。京都市伏見区に散在していた18ヶ所のセイタカアワダチソウ群落地において両種の卵塊密度を調べたところ,オオカマキリの卵塊は丘陵地から河辺草地まで広く分布していたのに対し,カマキリの卵塊は丘陵地には見られず,平地の水田地帯にあるセイタカアワダチソウ群落地に集中していた。この調査はおよそ30年前に行ったものであるが,今日その群落地のほとんどは消滅し,完全な市街地と化している。平地草原にのみ生息するカマキリは,潅木や樹木をも住処としかつ産卵するオオカマキリと異なり,都市近郊部から姿を消しているという実態を把握することができた。平地草原の永続性が危ぶまれる今日,やがてカマキリは日本から消滅するのではないかと危惧される。

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