著者
松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.57-67, 2007

カマキリ(チョウセンカマキリ)とオオカマキリの卵塊はセイタカアワダチソウに付いていることが多い。京都市伏見区に散在していた18ヶ所のセイタカアワダチソウ群落地において両種の卵塊密度を調べたところ,オオカマキリの卵塊は丘陵地から河辺草地まで広く分布していたのに対し,カマキリの卵塊は丘陵地には見られず,平地の水田地帯にあるセイタカアワダチソウ群落地に集中していた。この調査はおよそ30年前に行ったものであるが,今日その群落地のほとんどは消滅し,完全な市街地と化している。平地草原にのみ生息するカマキリは,潅木や樹木をも住処としかつ産卵するオオカマキリと異なり,都市近郊部から姿を消しているという実態を把握することができた。平地草原の永続性が危ぶまれる今日,やがてカマキリは日本から消滅するのではないかと危惧される。
著者
松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-65, 1993-03-31

かつて昆虫採集はわが国の理科教育において大きな比重を占めてきた。これは生物教育の方法論において,文部当局が標本収集ということを重視してきたことが大きい。いわば昆虫採集を政府自らが奨励してきたのであり,この方針はじつに明治初期から戦後10数年後まで続いたのであった。しかし,昭和33年(1958)に出された「学習指導要領」から,文部省の方針は採集重視から観察重視へと一変し,その結果昆虫採集は今日ほとんど顧みられなくなった。だが最近再び昆虫採集を見直す動きがあり,その是非をめぐって論争が起っている。これまで提出されてきた賛成派・反対派の論点を整理するとともに,昆虫採集には一定の利点が存在するが,それを上回る問題点も認められるとする筆者の考えを提示した。
著者
松良 俊明 野村 一眞 小松 清弘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-36, 1998-04-25 (Released:2017-05-25)
参考文献数
22
被引用文献数
3

As a part of a research program on the ecology of odonate larvae inhabiting artificial ponds, we surveyed outdoor swimming pools of primary schools in Kyoto City every late spring. During a 4 year period, 11 species of odonate larvae (Libellulidae, Aeshnidae, Gomphidae and Coenagrionidae: 7, 1, 1 and 2 species, respectively) were collected. Only larval Sympetrum striolatum imitoides predominated at most swimming pools. We took samples from 4 schools every late spring for 4 years and obtained the annual changes in the numbers of their larvae. This survey revealed that while larval S. striolatum imitoides was common in the school pools in Kyoto City, density varied from year to year. To clarify why only larvae of S. striolatum imitoides were dominant in the pools, their life cycle was examined at one pool. Larvae of chironomids, mayflies (Cloeon dipterum), water bug (Anisops ogasawarensis) and diving beetles as well as larval S. striolatum imitoides coexisted among detritus on the bottom. Especially chironomid larvae, which are preferred by larval S. striolatum imitoides, were present at high density. Most eggs of S. striolatum imitoides laid in Autumn hatched by mid winter, then the larvae rearched the final instar in late May. We estimeated that one third of them became adult before mid June, when the water was drained for pool-cleaning. As a reason for the dominance of larval S. striolatum imitoides, the following three traits may have been responsible: (i) their life cycle coincides with the off-season for the pool, (ii) females oviposit directly into the water, and (iii) larval S. striolatum imitoides prey on smaller larvae of other species of dragonflies because their eggs hatch earlier than other species.
著者
松良 俊明 坂東 忠司 梶原 裕二
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「ダンゴムシ-枯葉-微生物」の3者関係に着目し、ダンゴムシが陸上生態系の中で果たしている役割を中学生が十分理解・認識できる3種類の実験を開発した。すなわち、ダンゴムシは新しい枯葉より腐食のすすんだ枯葉を好むことを確かめる実験、ダンゴムシが枯葉を摂食することで微生物による枯葉の分解が促進されることを確かめる実験、またダンゴムシが枯葉を摂食した後に残る糞や食べ残しが植物生産に正に作用することを確かめる実験である。
著者
神宮字 寛 上田 哲行 五箇 公一 日鷹 一雅 松良 俊明
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.35-41, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
20

フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤は,稲の吸汁性害虫を対象とした殺虫剤であり,育苗箱に用いる.本研究では,本薬剤がアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数,羽化行動に及ぼす影響を小型ライシメータにより検証した.各ライシメータは,フィプロニル区,イミダクロプリド区および無処理区とし,それぞれ3反復で実験を行った.アキアカネ卵は,それぞれのライシメータに300卵散布した.そして,各ライシメータ中のアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数を求めた.アキアカネ幼虫の死亡率が最も大きい値を示したのはフィプロニル区となり,羽化個体が観察されなかった.イミダクロプリド区では,フィプロニル区に比べて死亡率は低い値を示したが,幼虫の平均成長率および成虫の後翅長が無処理区よりも低下した.また,羽化異常を示す個体が無処理区に比べて高い割合で発現した.フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤の使用は,アキアカネ幼虫の大きな減少を招くことが示唆された.
著者
廉隅 楼雄 松良 俊明
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-81, 1994-03-31

京都教育大学周辺部におけるツバメの営巣状況と,観月橋アシ原に見られた集団ねぐらの実態について調べた。ツバメの営巣期間は4月から8月上旬までであり,特に5月上旬から6月下旬にかけて盛んな育雛活動が観察された。抱卵から巣立ちまで約34日を要し,巣あたりの巣立ち雛数は約4羽であった。また巣の7割は人家の1階部分の庇につくられ,特にテント屋根の下側がよく利用されていた。ツバメはアシ原において,5月末から10月中旬まで集団でねぐらを形成することが確認されたが,8月下旬のピーク時には約25,000羽がやってきた。ねぐら入りする時の様子は,盛夏前は日没前に集まり出すが,盛夏になると日没以後に集まるというように,季節とともに変化した。アシ原内部のねぐらの位置は,大きく変動することなく,ほぼ一定の場所が利用されていた。
著者
松良 俊明 渡辺 守 坂東 忠司
出版者
京都教育大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

休止期間中の学校プールに生息する昆虫(主としてトンボ幼虫)を、理科や環境教育の教材として利用することを目指し、次のような項目について研究を行った。(1)プールに生息するヤゴや他の昆虫の種類構成。(2)優占種となっているヤゴの生活史。(3)なぜその種が優占種となっているかの理由。(4)植物プランクトンはヤゴの餌となる植食性昆虫のエネルギー源である。この植物プランクトンの種類構成と季節的変動を知る。京都市及び三重県津市での2年間の調査と実験の結果、以下のような知見が得られた。(1)京都市の小学校プールには8種のヤゴが確認されたが、最も高密かつ普遍的に見られたのはタイリクアカネ幼虫であった。ヤゴ以外にも、コマツモムシ、ゲンゴロウ類、ミズカマキリ、フタバカゲロウ、ユスリカ類などの幼虫が観察された。一方、津市では17種のヤゴが確認されたが、本来タイリクアカネが分布しないため、替わってシオカラトンボ、ノシメトンボ、ショウジョウトンボのヤゴが優占していた。(2)タイリクアカネは秋に産卵し、卵は晩秋から孵化し始める。ヤゴは春に急速に成長し、5月末から羽化を開始する。(3)タイリクアカネは水に直接産卵するタイプであること、他の種に先駆けて孵化するため、他の種のヤゴは本種の餌となっていることの理由により、タイリクアカネが優占種となっている。(4)プールに優占する植物プランクトンは緑藻のコスマリウム等であり、これらは砂ぼこりや枯葉、あるいは飲水に来た動物によりプールに持ち込まれたと考えられる。
著者
松良 俊明 三上 由記 若林 陽子 山崎 一夫
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-65, 2006-08-07
被引用文献数
1

京都府南部を流れる木津川の中流域には多数の砂州が形成され,多様な地表性昆虫が生息している.砂州を構成する基質はシルト,砂,礫など多様であり,各微地形に応じて生息している地表性昆虫も異なっていると推測される.本研究は,砂州内の様々な微環境(水際,礫地,砂地,堤防斜面の草地)に生息している地表性昆虫に焦点をあて,微環境間で構成種がどのように違うかを調べたものである.2000年5月から11月にかけ,月に1度の割でピットフォール・トラップを各環境ごとに10本埋め,1日後に回収した.トラップあたり平均捕獲数(183.6個体)の約7割はトビムシ目が占めた.これを除いて環境間で比較すると,草地ではアリ類が最も多くを占め,他の環境ではコウチュウ目が半数を占めていた.捕獲数の多かったコウチュウ目について分析したところ,属レベルで見たとき,最も多様な環境は「草地」であり,続いて水際>礫地>砂地となった.水際ではハネカクシ類が,その他の環境ではオサムシ科が多数を占めていた.