著者
光本 滋
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.455-466, 2007-12

教育基本法(1947年)の下、研究・教育の自由の保障とボトムアップを基礎に築かれてきた戦後日本の大学統治は、その十全な展開を見ることなく、今日、"教育外"からの圧力による構造改革にさらされている。法人化により国公立大学の内部の統治はトップダウン型のマネジメントへと移行し、教授会の権限は縮小した。一方、予算配分の裁量権と評価権を手に入れた政府の統制力は拡大している。ここに、「改正」により教育基本法の法理が歪められたことは、社会貢献を評価の対象とすることによる、いっそうの大学統制へと帰結するおそれがある。設置者毎の判断に委ねられている公立大学の法人化も、行財政水準の低さを克服することにつながらないばかりか、行財政改革の論理が優先される結果となっている。これら大学法人制度の欠陥を克服し、さらに、社会との多様な対話のチャンネルを形成するような制度構想と大学の統治改革が求められている。

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