著者
岡田 宣子 渡部 旬子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.87-98, 2008-02-15
被引用文献数
2

ユニバーサルデザインの設計要件として,身体機能の低下が反映された腕ぬき・腕入れしやすいかぶり式上衣のゆとり量を一般解としてとらえるために,介助されずにどうにか自立している高年(29名)に更衣を行ってもらい若年(83名)と比較し検討した.6サイズの実験衣の中から最適なサイズを選び,ゆとり量3種とAH下げ寸法を2種変化させた6着の実験衣table tableを用いて椅座位で実験を行い,腕ぬき・腕入れ動作所要時間を測定した.高年では身体への負担を詳細に評価するため同時に重心動揺測定を行った.腕ぬき可能となる時の被験者の体形とパターンとの関わりをみるために身体計測を行った.主な結果はつぎのとおりである.1)円滑な更衣動作を行うためには,腕ぬき可能となるBL上の最小ゆとり量より若年では4cm,高年では8cmゆとり量を多く要する.これは若年では腕ぬきしやすいゆとり空間を確保するため,実験衣を左腋下までずらせ,脊柱を側屈し柔軟かつ敏速に対応しているが,高年では身体機能の低下が影響して,若年のように細やかに対応できず衣服をずらさず,着たままの状態でAHから腕ぬきしている傾向があることによる.若年・高年ともに腕ぬきの方が腕入れより身体負荷が高く生体への負担が大きいことがわかる.2)身体計測値と腕ぬき可能な最小ゆとり量の実験データを含めた18項目について主成分分析を行ったところ,4つの主成分が抽出された.第1主成分は体幹の太さ,第2主成分は肩峰幅,第3主成分は腕ぬき可能なバスト最小ゆとり量,第4主成分は肘丈と解釈された.累積寄与率は76%である.各主成分の主成分得点の平均値を高年と若年とで比較した.高年が若年より第1・第3主成分では大なる,第2主成分では小なる有意差が認められた.3)解析項目の平均値の検討から,高年と若年とでtableは,腕ぬき可能なバスト最小ゆとり量はそれぞれ28cmと19cmである.このように腕ぬき可能な最小出来上がりバスト寸法は高年が10cm程大きい(腕ぬき可能な最小出来上がりAH寸法は54cmと49cm).4)円滑に腕ぬきできるゆとり量を確保するには,胸囲に高年では36cm,若年では23cm多く加える必要があることが明らかになった.これらには,素材やデザイン・パターンによる工夫で見栄えを良くするための配慮が求められる.

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