- 著者
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中村 一基
- 出版者
- 岩手大学語文学会
- 雑誌
- 岩大語文 (ISSN:09191127)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.1-8, 2007
義経と弁慶の五条大橋での対決場面に相当するほどの、わくわくする対決場面が他にあるだろうか。千本の太刀を集めることを目標として、京の町を徘徊する僧兵姿の弁慶が、五条大橋で千本目に当たる黄金の太刀を帯びた女装の笛吹き童子牛若丸に遭遇、太刀をめぐって闘いを行ない、牛若丸の圧倒的な強さの前に降り、主従の約束をするという、《義経伝説》の中でも最も親しまれた場面である。現在、この場面を描いた多くの絵(挿絵・浮世絵が大半)が残っているが、七つ道具を背負った弁慶の大薙刀が振り下ろされ、牛若丸が軽やかに飛翔してそれをかわしている構図が、その絵の定番の構図である。本稿では、飛翔する《笛吹き童子》に象徴される芸能神義経誕生の神話にこだわってみたい。