著者
古山 和男
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.89-100, 2007

日本語律文の「七五調」は、かな文字2音で構成される音節を1拍とする拍節リズムで詠じられる。この1拍を構成する2音は、音楽的な勢いにより時間の長短を生じる。これは「イネガル音符」と同じ現象である。この「イネガル音符」や「カダンス」に関わる、拍節の「ムーヴマン」という古典派以前の音楽概念を援用して考察するなら、「七五調」の「字余り」の意味とそれが許される条件、「四三調結句の忌避」の理由が、「ムーヴマン」の加速の方向を区別して認識することで明快に説明できる。また、この「ムーヴマン」の加速方向という観点で、現代の口語を分析すれば、日本語固有のリズムの原理が明らかになる。2語が連結されると、後の語頭が濁る現象、あるいは「乱れ」と捉えられている言葉の変形も、この原理に従った法則性の高いものである。

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