- 著者
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上原 康雄
- 出版者
- 尚美学園大学
- 雑誌
- 尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.13-30, 2007-03-31
映画は19世紀末のルミエール兄弟のシネマトグラフを起源として、110年の時間が経過した。今日の映画界において、歴史と社会と風土と人間を一体として、壮大な映画を制作する監督の一人にテオ・アンゲロプロスがいる。彼のテーマはギリシアの現代社会の動向、民族、移民、国境、家族の絆、人間疎外など幅広い。そしてギリシア人独特な神話、叙事詩、悲劇を映画に取り入れ、現代と過去を融合させる。演出手法は徹底したリアリズムであるが、ユーモアとペーソスを滲ませ秀逸である。彼は映像をあくまでも実写の迫力で描き、その絵画的な美しさは比類がない。映像表現は1シーン=1カット、360度パン、移動ショット、オフシーンの重視により、「現在と過去の同一画面での描写」「現実と幻想の共存」など斬新な表現で映像空間を構成する。そしてギリシア独特の演劇と演舞が哀愁をこめた音楽と共に演じられる。この研究ノートではアンゲロプロス監督の「再現」から「エレニの旅」を分析し、我々の映像制作の参考にしたい。