- 著者
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篠沢 健太
- 出版者
- 日本緑化工学会
- 雑誌
- 日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.4, pp.545-547, 2008-05-30
河川水辺のエコトーンの自然再生について,ランドスケープデザインをする立場から,また「市民参加」で公園を作る立場から紹介する。対象は大阪府南部を流れる大和川支流の1級河川石川に整備中の石川河川公園「自然ゾーン」である。石川河川公園は,石川の堤外地11.6km, 172.6haに広がる府営公園であり,公園区域のうち中流域の約1.6kmの区間が「自然ゾーン」に指定されている。この区間は他と比べて川幅が広く,連続した低水護岸が整備されておらず,河畔林や高茎草原などの河原の植生が残っている。河川敷に公園が整備される場合,通常,河川水辺は治水を担当する河川関連部局の管轄となり,公園は河川敷(高水敷)の土地を占有して整備されることが多い。しかし石川河川公園の場合,河川と公園を明確に分ける区切りが存在せず,よく言えば一体的な管轄のもとに整備が進められている。一方水辺エコトーンの整備に関して,さまざまな課題も生じている。私は学生時代から河川環境や水辺の公園整備について学んできた。当時は,周辺地域の地形と河川の関係や河川微地形の入れ替わりと植生の単位性について考えていた。安藝皎一が「河相論」で示した,流域の地形・地質と河川水流が生みだす河川の「個性」について,荒川水系や入間川において把握した。また微地形が洪水によって移動して入れ替わると同時に,その上に生育する植生も洪水の頻度や地下水位の影響を受け,河川敷に特徴的な「微地形-植生」の組み合わせが生じることを,鬼怒川水系小貝川や矢作川水系乙川で検討してきた。ただし,それぞれの内容は学術的な研究としては端緒に過ぎず,十分検討できてはいない。芸術大学に勤めるようになって,これらの経験は生態学的な調査・研究としてよりも, 「デザインする」際のコンセプトとして,私のなかで大きな意味をもって現在に至っている。石川河川公園「自然ゾーン」で河川整備に取り組むようになったのは2000年頃からである。以前は通勤途中にその姿を眺め,休日に公園を訪れて,その整備に疑問を持ってはいたが5),河川整備に主体的に取り組むには至っていなかった。縁あって石川流域で自然保全活動をする市民団体と知り合い,当初は一市民として公園行政担当者との会議に参加,やがて石川で自然観察や保全活動をするNPO石川自然クラブの一員となり,現在では大阪府が主催する管理運営協議会に学識経験者として参加するようになった。立場はさまざまであるが,これまでに石川河川公園において私が関わってきた取り組みを紹介したい。