著者
高木 紘一
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.1-8, 2008-02

本稿は、筆者が1979年8月から1980年7月にかけて米国ミシガン大学ロースクールに客員研究員として留学した際に、当時同大学に留学中の伊藤真氏(現東京大学教授・民事訴訟法、当時は名古屋大学助教授)の発案による日米比較法研究会で、筆者が報告したディスカッション・ペーパーを掲載したものである。当時、ミシガン大学ロースクールには、岸田雅雄氏(現早稲田大学法科大学院教授・商事法、当時は神戸大学助教授)、丸田隆氏(現関西学院大学法科大学院教授、当時は甲南大学助手。陪審制度の研究で著名)、巽 高英氏(現警察庁長官官房審議官)をはじめ、各界から新進気鋭の日本人留学生が学んでおり、お互いに切磋琢磨しうる環境が整っていたこともあり、単に向こうから学ぶだけでなく、こちらから貢献できることはないかということで、ロースクールの教員、大学院生に参加を呼びかけてこの研究会が立ち上がったものである。ロースクールの錚々たるプロフェッサーも交えてのコロキュアムでは、自分の決定的な語学力不足もあり、終始借りてきた猫を決めこんだわけであるが、参加者は、いずれも日本法に関心が高く研究会立ち上げは成功したとの印象を持った。 コロキュアムは計5回開催され、日本側から私を含めて5名の者がそれぞれの専門分野からの報告を行なった(報告タイトルは、伊藤 真"Comparative Analysis of Out-of-Court Insolvency Procedures in the U.S. and in Japan",岸田雅雄"Enforcement of Japanese Securities Regulation",丸田隆司"One Aspect of Products Liability Doctorine in Japan : The Establishment of Strict Duty of Care in Food Manufacturing",巽 高英"Police System and the Control of Organized Crime in Japan")。 筆者は、当時の日本で新しい労働法上の理論課題として浮上してきた親子会社や企業集団における使用者概念の拡張問題を取り上げたのであったが、予想以上に反響があった。研究会に参加した労働法のSt. ANTOINE教授が、アメリカでもこのような問題は、Double-BreastedOperation(親子会社方式の経営形態を「ダブルの背広」にもじった用語)として論議されていると教えてくれたのには感激した。国と場所は違っても、利益追求という資本の論理は同じということである。帰国後、労働契約における使用者概念及び労働者概念は筆者の主要な研究テーマの一つになったが、懐かしい思い出の一コマである。

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