- 著者
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佐藤 貴裕
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.158-144, 2008-01
上田万年・橋本進吉(一九一六)が指摘するように、近世節用集は、慶長期の草書本を介して易林本から派生したが、易林本の欠点も引きついだ。平井版・草書本でも修正がなされなかったわけで、慶長期の節用集編纂の限界を思わせる。しかし、一〇項目にわたる編集上の諸点について寿閑本を検討すると、易林本本文を尊重しつつも、批判的に見つめなおして再整備をほどこすなど、高度な修訂が認められた。こうした改編ができたのは、開版者であり、編者でもあったろう寿閑の学識や出版に関する能力によることが、当時の文献や寿閑の他の出版書から推測・確認された。また、寿閑本から慶長一六年本を派生するにあたっては、複製の印刷技術を大胆に導入したことが知られた。このようなことから寿閑本(および慶長一六年本)は、慶長期を代表する先進的な節用集であると位置づけられ、今後の利用のための検討が期待されるとした。