著者
佐藤 貴裕
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.132-118, 2015-04-01

辞書史的観点を中心とする、節用集研究の現況と今後の可能性・注目点・注意点などを記した。まず、従来の研究の到達点の大要を示した。ついで、研究の基礎となる資料上の諸問題について、「節用集諸本の現況と問題点」「資料新出の可能性」「版種研究」「編集をめぐる諸相の解明」の四題について詳述した。さらに、時代ごとの社会的位置づけのための手法について、「諸本の性格論・本質論」「付録研究の進展」「利用様態研究の可能性」の三題のもと、やや詳述した。以上により、辞書史的観点からの研究を深化させるためには、様々な側面・部分について隣接分野の研究成果を積極的に参照・摂取する必要のあることが知られた。
著者
佐藤 貴裕
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.158-144, 2008-01

上田万年・橋本進吉(一九一六)が指摘するように、近世節用集は、慶長期の草書本を介して易林本から派生したが、易林本の欠点も引きついだ。平井版・草書本でも修正がなされなかったわけで、慶長期の節用集編纂の限界を思わせる。しかし、一〇項目にわたる編集上の諸点について寿閑本を検討すると、易林本本文を尊重しつつも、批判的に見つめなおして再整備をほどこすなど、高度な修訂が認められた。こうした改編ができたのは、開版者であり、編者でもあったろう寿閑の学識や出版に関する能力によることが、当時の文献や寿閑の他の出版書から推測・確認された。また、寿閑本から慶長一六年本を派生するにあたっては、複製の印刷技術を大胆に導入したことが知られた。このようなことから寿閑本(および慶長一六年本)は、慶長期を代表する先進的な節用集であると位置づけられ、今後の利用のための検討が期待されるとした。