- 著者
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三宅 康二
三宅 孝子
- 出版者
- 日本特殊教育学会
- 雑誌
- 特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.3, pp.p41-49, 1980-03
表出手段として音声言語を発達させえず、身振りを使用している一例の重度精薄者(C.A.25才、M.A.2才)の身振りの観察・分析を実施した。語彙:本症例の身振り言語の最小単位は語であり、語彙総数は226語。名詞(209語)は全て具象語でありまた所記に階層関係が認められなかった。述部語彙は17語にすぎずその種類も限定されており獲得の困難性を示した。76.5%の語彙は能記と所記が有契性を持ち、特に所記を視覚的に把え能記を形成している語彙がその41.2%を占めた。文:文の長さは一語文から三語文。S→N(Pred.)、S→N+N(Pred.)。文中の名詞の意味関係は一語文では7種類の格が認められたが、多語文ではそのうち動作主、経験者、対象、日標のみが出現し、この格が基本の格と考えられる。名詞二語を含む文では、反復を除くと、二つの名詞が意味的に非可逆である非可逆文のみが出現した。