著者
堀本 佳誉 菊池 真 小塚 直樹 舘 延忠
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B1567, 2008

【諸言】常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症のひとつである、眼球運動失行を伴う失調症(AOA1)はaprataxin遺伝子の変異により起こる疾患である。この遺伝子の翻訳するタンパクは一本鎖遺伝子損傷修復機能を有することが確認されている。疾患の発症時期は10歳以前であり、発症早期より失調症状が認められ、その後、疾患の進行とともに末梢神経障害が著明となる。成人期AOA1患者の小脳症状と末梢神経障害の臨床症状を知ることは、予後を予測した理学療法を行うために重要である。また、一過性の過負荷の運動は遺伝子やタンパクの損傷を引き起こし、逆に規則的で適度な運動は損傷を一定に保つか減少させることが知られており、AOA1患者の臨床症状における遺伝子損傷レベルを知ることは適切な運動量・強度の処方の上で重要な指標となる。<BR>【方法】対象はAOA1患者(689insT)の姉妹(44歳、48歳)であった。末梢神経症状の量的評価として運動神経伝導速度の計測を行った。対象神経は、上肢は尺骨神経、下肢は腓骨神経とした。重症度は厚生省運動失調調査研究班によるSCDの重症度分類、小脳症状はInternational Cooperative Ataxia Rating Scale、末梢神経症状はNeuropathy Disability Score、筋力評価はMedical Research Council sum score(MRCS)を用い、質的評価を行った。遺伝子損傷レベルの測定は平常時の尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(以下8-OHdG)濃度測定を行い、40代女性10名(43.3±2.1歳;41~46歳)を対照群とした。各被検者に対し、本研究の説明を行い、書面にて同意を得た。<BR>【結果】神経伝導速度は、尺骨神経では21.2m/s、20.5 m/s、腓骨神経では計測不能で、尺骨神経では20歳代から40歳代の約15年で20m/s程度の低下が認められた。質的評価により、重度の小脳失調と、特に末梢部・下肢に強い筋力低下が認められることが明らかとなった。尿中8-OHdGでは、対照群は3.7±1.2ng/mg、AOA1患者はそれぞれ4.0ng/mg、7.3ng/mgであり、対照群との差は認められなかった。<BR>【考察】成人期AOA1患者の臨床症状の評価により、より早期に小脳症状に対する理学療法のみでなく、末梢神経障害を考慮した身体局所の選択的筋力強化、関節変形・拘縮の予防的運動療法などの理学療法を行うことが重要になると考えられた。平常時の尿中8-OHdGは対照群との差が認められなかったが、過負荷な運動はAOA1患者の病状の進行を助長してしまう可能性があることを考慮すると、今後、理学療法前後の尿中8-OHdGの測定を行う必要があると考える。

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