- 著者
-
鈴木 眞理子
- 出版者
- 埼玉県立大学
- 雑誌
- 埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.21-33, 2007
【目的】女性ソーシャルワーカーのキャリア発達がどのように変化していくか、ライフヒストリーの中から分析考察する。家庭環境や結婚・子育てが職業選択から転職や継続にどのような影響を与えているか、個性がソーシャルワーカーのキャリアにいかに関係するかを比較検証する。【方法】地域、分野、出生の異なる50歳代、3人のベテラン女性ソーシャルワーカーにインタビューを行い、ライフヒストリーを起こし、キャリア発達と家族の特徴、本人の個性やパーソナリテイとの関係を分析した。【結果】1970年前後に就職した世代は、ソーシャルワーカーは一般的職業ではなく、その選択に家族環境が大きく影響している。1人は障害のある弟を庇う正義感と父親への反発から福祉の仕事をライフワークとして目指した。もう一人は英語力を生かして国際的な仕事で転職を繰り返すが、親や弟の介護をきっかけに生涯学習として福祉に出会い、帰郷し地域包括支援センターの相談員となった。3人目は家庭環境が社会事業の中にあり、一族が必要とした看護師となり、法人発展の過程でソーシャルワーカーとなり特養の施設長となった。【考察】3人のうち2人の職業選択において、障害児の兄弟と育ち、両親が世話をすることが社会福祉やソーシャルワーカーに向わせたことが推察される。他の一人は社会事業を興した親のもとで、自然に家業を継ぐように福祉に向った。3人の職業観、結婚と家庭環境、性格によって、一相談員、特別養護老人ホームの施設長、NPOの介護事業経営者と、それぞれの最終ポストは異なった。【結論】ソーシャルワーカーという職業選択は家庭環境に大いに影響されているが、キャリア発展の結果は、本人のパーソナリテイによって大きく影響されることが結論づけられた。