著者
浅川 泰宏 小林 憲生
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.35-41, 2012

【目的】福島第一原発事故以降の環境放射線への社会的関心の高まりを背景に、これまで取り組まれていなかった聖地の環境放射線量を測定する。【方法】四国八十八カ所に番外札所を加えた90カ所を調査地とし、携帯型γ線測定器を用いて聖地の地表γ線量を測定し、調査地の地理情報や計測器の設置面の環境などの比較を行った。【結果】四国遍路の聖地における平均放射線量は0.087μSv/hであり、越谷市と同レベルである。また県別や設置面での比較に有意差が見られた。【考察】放射線量は西にいくほど高くなる傾向がある。先行研究から自然放射線量が高いことが知られている愛媛県や高知県の一部では、本調査でも高い値が得られた。また設置面が石畳である場合は顕著に高い値が得られた。このことから、聖地が自然放射線に人工的な宗教的空間としての放射線量が付加された「非日常的」な環境であることが示唆される。最後に四国八十八カ所の巡礼で受ける総被曝量を5.1μ/Svと推計した。
著者
小林 悟子 関根 正
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-118, 2006

【目的】援助される者と援助する者がとらえるよい援助関係について比較検討し、精神科看護におけるよい援助関係について考察すること。【方法】援助する者である精神科看護師を対象に「どういうときによい援助関係が築けたと感じるか」という視点の調査結果を基に、援助される者である2名の元患者へインタビューを行った。【結果】援助する者の調査結果と援助される者の結果の比較検討から、よい援助関係の捉え方には、共通項とずれが存在している事と看護師の構えを強く感じていることが明らかになった。【考察】ずれの存在という点と援助される者が援助する者に対して構えがあると指摘している2点から、精神科看護におけるよい援助関係のあり方について考察を行った。ずれの存在を認め、その手段としてゆとりある柔軟な態度が必要と考えられた。看護師の構えを緩める方法として、援助する者が決めつけない自然な関わりをし、当事者に会うことが重要であると考えられた。
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.51-61, 2006

ライフコース研究は家族社会学に応用され、親の価値観、親世代の生活状況が子ども世代に与える影響を考察するのに大きく貢献した。本論文は、専門職であるソーシャルワーカーの力量形成のキャリア発展の要素をライフヒストリーの中に見出す研究の一部として、親世代の影響についてソーシャルワーカーを志した娘世代3名のキャリア発達の中に考察した。いずれも父親は職人、自営業、工場労働者で、学歴も義務教育か高卒であるが、本人の成長と並行して父親も家作のある自営業者、工場長、管理職と出世した。父親のキャリアアップと生活向上を可能にしたのは、日本の経済発展であると同時に、両親の真面目さと努力、才覚である。この家庭状況が3名の原動力になっている。また日本の高等教育の発展が、娘世代に親たちの学歴より上の高等教育を可能にした。娘世代は女性の新たな活躍の場として福祉現場を選び、肉体労働をこなし、人間模様を体験した上で、組織のリーダーや管理職としてキャリアアップした。これは日本の福祉時代の到来と施設やサービス事業所の拡充が追い風になっている。同時に3人は国家資格や専門資格の取得と、米国留学、大学院進学、各種研修講師として、質としてもキャリアアップしているが、これを可能にしたのは、本人の強い向上心と独立心である。父親たちの経済的地位の向上を日本経済が後押ししたのと同様に、娘たちの専門職としてのポスト確保、地位向上は福祉サービスの発展、介護事業拡大が可能にした。社会サービスである福祉は経済的発展の上になりたち、個人の世代的キャリア発展も時代の影響が大きいことが証明された。
著者
梅崎 薫
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.65-71, 2013

【目的】修復的司法または修復的正義Restorative Justiceと呼ばれる対話アプローチを用いて、葛藤のある家族関係の修復を早期から支援し、高齢者虐待を予防する家族支援法(以下、RJによるFGC)を開発する。 【方法】研究方法はアクションリサーチで、実践モデルの開発においては芝野が日本における児童虐待領域で用いて修正を加えたModified-Design and Development(M-D&D,2002)を採用する。 【結果および考察】共同開発する実践家から予防に対して期待と難しさがあげられ、社会への啓発、地域住民の参加、専門職の役割、加害側の参加、ライフイベント、世代交代での不適応、深刻度と継続期間、アドボカシー、軽度知的障害者等支援、アルコール依存、状況での暴力、経済的搾取とネグレクトという論点が抽出された。 【結論】RJによるFGCのたたき台を検討するには、適用対象の特定が必要で、援助技術の獲得にはシナリオロールプレイが効果的と考えられる。プロセティック・アプローチとして、地域住民にRJという対話方法を啓発する必要がある。
著者
林 幸子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-78, 2013

佐々木邦は、アメリカのユーモア作家マーク・トウェインの影響を受け、大正から昭和にかけて数多くのユーモア溢れる作品を生み出すと同時に、トウェインの作品の翻訳の第一人者となった。特にいたずら好きのトムを髣髴とさせる太郎を主人公とした『いたづら小僧日記』には、『トム・ソーヤの冒険』と酷似した愉快でおおらかな笑いが頻出している。トウェインも佐々木も読者を楽しませるための娯楽的ユーモアを目指していたためである。しかしながら、トウェインは晩年になるにつれて腐敗した社会や残酷な人間の本質を風刺するようなユーモアに傾倒していく。いわば武器としてのユーモアの提唱であり、その萌芽は『トム・ソーヤの冒険』にも既に表れていた。佐々木はそうしたトウェインのユーモア観の変化を受容できず、佐々木の『トム・ソーヤの冒険』、『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳からは、攻撃的ユーモアを含む場面が脱落する結果となった。
著者
土居 通哉 坂田 悍教 細川 武 岡本 順子 五味 敏昭 柳川 洋 北川 定謙
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.111-116, 2001

2001年8月9日、O町のふれあい作業所にて当日の利用者12名(精神分裂病)について精神衛生相談を行い、保健所における利用者患者票を閲覧した。他方、都内のA精神病院にて患者3名(精神分裂病)の診察を行い、カルテを閲覧した。これらを比較することにより、精神医療場面の相違による患者自身の構え、病理と環境の相互作用、疾病モデルと生活モデル等を検討した。それによって、症例を通じて医療場面の違いが治療構造に及ぼす影響を考察した。その結果、作業所と病院での治療構造の違いは、環境と患者の役割構造によるところが大きいことが分かった。よって、精神障害者に対する地域保健医療福祉活動として理想的な環境は、利用者自身の健康的な側面に焦点を当て、地域住民を交えた家庭的な雰囲気の中で行われることが重要であると考えられる。
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-33, 2007

【目的】女性ソーシャルワーカーのキャリア発達がどのように変化していくか、ライフヒストリーの中から分析考察する。家庭環境や結婚・子育てが職業選択から転職や継続にどのような影響を与えているか、個性がソーシャルワーカーのキャリアにいかに関係するかを比較検証する。【方法】地域、分野、出生の異なる50歳代、3人のベテラン女性ソーシャルワーカーにインタビューを行い、ライフヒストリーを起こし、キャリア発達と家族の特徴、本人の個性やパーソナリテイとの関係を分析した。【結果】1970年前後に就職した世代は、ソーシャルワーカーは一般的職業ではなく、その選択に家族環境が大きく影響している。1人は障害のある弟を庇う正義感と父親への反発から福祉の仕事をライフワークとして目指した。もう一人は英語力を生かして国際的な仕事で転職を繰り返すが、親や弟の介護をきっかけに生涯学習として福祉に出会い、帰郷し地域包括支援センターの相談員となった。3人目は家庭環境が社会事業の中にあり、一族が必要とした看護師となり、法人発展の過程でソーシャルワーカーとなり特養の施設長となった。【考察】3人のうち2人の職業選択において、障害児の兄弟と育ち、両親が世話をすることが社会福祉やソーシャルワーカーに向わせたことが推察される。他の一人は社会事業を興した親のもとで、自然に家業を継ぐように福祉に向った。3人の職業観、結婚と家庭環境、性格によって、一相談員、特別養護老人ホームの施設長、NPOの介護事業経営者と、それぞれの最終ポストは異なった。【結論】ソーシャルワーカーという職業選択は家庭環境に大いに影響されているが、キャリア発展の結果は、本人のパーソナリテイによって大きく影響されることが結論づけられた。
著者
森 正樹 林 恵津子 Masaki Mori Etuko Hayashi
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 = The bulletin of Saitama Prefectural University (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-34, 2012

障害児保育巡回相談を行う専門職が、幼稚園・保育所との協働関係を構築する際の諸課題について面接法により調査した。その結果、これらの現場で、必ずしも専門職の役割が十分に理解されず、巡回相談の有効活用が進まない状況が示された。また、保育者に現場の実践に根ざした具体的なアドバイスを行うことの難しさも報告された。さらに、専門職と保育者の間に依存的関係が固定化するリスクや、対等な関係構築の困難さも指摘された。 これらを踏まえ、専門職に求められるコンサルテーションの技術に関し、以下の諸点の提言を行った。1.関係性の中に自らの専門性を位置付ける柔軟性、2.保育者の実践に学ぶ姿勢、3.発達障害児等のニーズを包摂する保育実践の再構成への支援、4.保育者の協働性開発への支援、5.保育者による実践の言語化と課題解決プロセスの促進・共有、6.状況把握の俯瞰的視点、7.健全な批判を可能とするパートナーシップの構築、8.保育者が自らの専門性と創造性を開発するための支援。
著者
大塚 麻揚 天谷 真奈美 柴田 文江
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.181-187, 2002
被引用文献数
2

本稿では、地域リハビリテーションやエンパワーメントが重要視されるようになってきた精神保健福祉の領域で欠かすことのできない、障害を持つ人自身の主観的側面について述べる。主観的側面の中でも特に重要と思われる自己効力感を取り上げ、関連が深いとされる自尊感情とともに概説する。わが国の自己効力感に関する過去の文献から次のようなことが言えた。(1)自己効力感は、健康教育、患者教育を中心に幅広い分野で検討および活用され、その有用性が確認されている。(2)自己効力感の概念は、精神障害者支援においても取り入れられ、検討がなされており、有用性が示唆されている。今後の課題として、精神障害者の一般性自己効力感に関する検討、自己効力感の発達的側面に関する検討、すなわち自己効力感が育まれていく過程やその支援の検討、および精神障害者自身の言葉や体験に基づく自己効力感の検討があげられる。
著者
西原 賢 久保田 章仁 井上 和久 田口 孝行 丸岡 弘 植松 光俊 藤縄 理 原 和彦 中山 彰一 溝呂木 忠 江原 晧吉 細田 多穂 山口 明 熊井 初穂 二見 俊郎
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.39-45, 2001

筋線維伝導速度(MFCV)をなるべく多くの筋線維から詳細に調べる目的で、計算機プログラムによる筋電図のパルス検出と平均法を開発した。この報告では、パルス検出の原理について説明をし、実際に健常成人男女2人の左等尺性肘屈曲運動時の上腕二頭筋表面電極筋電図を双極アレイ電極で記録し、アナログデジタル変換後計算機に取り込んだデータからMFCVを算出した。その結果、MFCVは先行研究で報告された範囲内に分布し、神経終板付近や腱付近からのMFCVは筋の中心部からのMFCVより早かった。取込開始から時間の経過と共にMFCVの一定の減少が見られた。算出した平均パルス波形は、雑音による平均波形とは明らかに異なる特徴を持っていた。これらのことから、このパルス検出と平均法は今後臨床で有効に活用できる可能性があることが考えられる。
著者
渋谷 えり子 Eriko Shibuya
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 = The bulletin of Saitama Prefectural University (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.55-59, 2010

平成20年度に足浴時の温湯温度が低下しにくい物品についての実験研究を行った結果、足浴時に使用する温湯温度が低下しにくい保温補助物品として、ポリ袋とバスタオルや断熱シートなどを併用する方法で保温効果が得られた。この結果より、今回の研究目的は、足浴時の保温補助物品としてポリ袋とバスタオルを併用して実際にバケツで足浴を実施した時の湯温保持効果を明らかにすることである。方法として、女子学生7名に、保温補助物品を使用し、さらにかけ湯用物品の保管も工夫する方法で足浴を実施し、検証した。その結果、バケツ内の湯温の適温保持効果とかけ湯の温湯の適温保持効果も得られ、感染予防効果や省スペースで実施可能な簡便な方法としての示唆を得た。
著者
及川 裕子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-7, 2005

親になることによって起こる変化を「親性の発達」とし、その因子構造を明らかにすることを目的に質問紙調査を行った。その結果、親性の発達について、「次世代因子」「社会環境因子」「生き甲斐因子」「家族の絆因子」「世代間因子」「抑うつ因子」の6因子を抽出した。6因子について、母親と父親で比較すると「次世代因子」「社会環境因子」「世代間因子」「抑うつ因子」の4因子について有意差がみられた。母親の就業状態・子どもの性別において比較したが、有意差は見られなかった。また、親性の発達に影響する要因として、夫婦関係の満足度と子どもを持つことを望んでいることが影響を与えており、母親から受けた被養育体験はやや影響を与えていた。
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-41, 2008

中途参入の女性ソーシャルワーカーのキャリア発展についてライフヒストリーから分析考察する。福祉に縁のない家庭環境出身の3人の女性が、就職、結婚、子育ての経験後、再社会参加として社会福祉を選択し、ソーシャルワーカーとしての地位を確立する経緯を追った。【目的】(1)育った家庭環境や子育て、前職の経験がどのような影響を与えているか、(2)共に早世した父親の存在が娘の生き方とキャリアにいかに影響を与えたか、(2)個性が、キャリア発展やポスト獲得にどのように影響を及ぼしているかを検証する。【方法】50歳前後の3人の女性ソーシャルワーカーのインタビューによるライフヒストリーを起こし、表に整理しながら、過去のキャリアと現在の福祉分野(ソーシャルワーカー)でのキャリアを個人的動機、家族の特徴、特に父親の与えた影響、本人のパーソナリテイとの関係に注目し分析考察した。【結果】G子は地元社協の立ち上げ職員の欠員補充として就職した。H子は子育て中、多様な職業経験の後、キャリア蓄積のため社会福祉士の資格取得を目指した。病院就職後も外で多彩な活動を繰り広げた。I子は父の死という不条理への怒りから商社を退職、多様なフリーター経験をした後、安定とやりがいから資格に結びつく福祉系大学へ進学した。【考察】3人のキャリア発展のプロセスは異なるが、早世した父親の影響がキャリア発展の節々に強く表れていた。G子は結婚相手と子育てを生きがいにする家庭中心主義、また地味に裏方として組織を支える真面目さがあった。H子は先見の明のある経営者、世間で役職をこなす名士としての父親像を理想として、華のある注目されるソーシャルワーカーとして多くの役職につき、三障害を対象にする画期的な相談支援センター長となって自分の理想に近づいた。I子は進学か就職かで大喧嘩の直後に父親を失い、喪失感の影響は大きかった。父親の死の意味を自分のキャリア発展に吸収するまで8年間の時間がかかったが、自分に適した福祉サービスの施設経営者として父親の夢を実現した。【結論】3人のキャリア発展のゴールは「内助の功型」「スター型」「経営者型」とそれぞれの個人のパーソナリテイを色濃く反映している。その背景には娘に大きな愛情と期待をかけ、無念にも早世した父の思い、それに応えた娘の思慕があった。3人のソーシャルワーカーとしてのキャリアコースには、それぞれの個性と同時に、育った家庭環境、父親の娘への期待が大きく反映されていた。
著者
田中かの子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.103-123, 2011

健康被害をきたしやすい自然環境のもとで生きるインドの人々は古来、死すべき生命の定めに順応しながらも、今生においていかに生きるかの実践哲学を種々に考案してきた。現代インドにおけるその実態を観察するうえで、筆者がボランティア活動をしていた病院での生活は、きわめて示唆に富むものであった。入院患者どうしの相互扶助の精神、多人種、多言語、多宗教の日常における他者理解の柔軟性、病室でも充実しうる祈りの時間、素直に本音をぶつけあえる人間関係、延命治療よりも帰郷して余命を生きる幸せを求める態度など、日本の社会では得難い学びの機会を集約した世界である。以上の観察記録を、アメリカ社会で全人的な統合医療を展開した先駆者たちの活動と比較しながら総覧すると、インド社会におけるコミュニティ意識の強さが際立ち、死を生から切り離して身構える欧米人の死生観との相違が明らかになるが、生きようとする意志の崇高さは、普遍的である。
著者
高畑 隆
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.129-134, 2012

精神障害者スポーツの経過と埼玉カンピオーネ活動を整理する。方法は参与観察法である。結果は2001年 バレーボールが全国規模で行われている。2008年フットサル大会が各地で開催される。埼玉カンピオーネは(1)地域の楽しみの交流大会、(2)県域の競技性、(3)県外への選抜チームがある。また、他の障害者との大会があり年間を通して隙間のない活動である。考察、埼玉県内の精神障害者フットサルは3層構造で推進され、リーグ戦を行っているのは埼玉県だけである。フットサルは自立的活動と共に、多様な人々とのコラボレーション活動で、精神障害者の健康増進、自立と社会参加で の地域づくりでもある。結論、フットサルは全国各地で開催され広域大会も開催される。埼玉カンピオーネは地域の精神障害者リハビリテーションとして地域交流大会、県域リーグ戦、選抜カンピオーネ活動がある。精神障害者も市民として多様なスポーツ大会を選べ、結果として社会統合活動になる。
著者
木下 里美 大塚 眞理子 朝日 雅也 小田 心火 水野 智子 井上 和久 田口 孝行 加藤 朋子 井口 佳晴 鈴木 玲子 小川 恵子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-42, 2002

Relationship between the effect of field practicum in freshman year and the category of practicum facilities was analyzed based on the results questionnaire survey of the freshmen who had participated in the field practicum during a period from 2000 to 2002. The facilities where the practicum was performed were categorized to be "hospitals", "health and welfare facilities for the elderly "and "welfare facilities for adults and children with disabilities". Answers to the questionnaires concerning "communication with colleague students in the same group", "learning opportunities in the field" and "the report session in the university after the practicum" were analyzed. Many students responded affirmatively to these questionnaires and the effects of field practicum could be recognized. On the other hand, the following was also suggested as the further tasks to be solved for improving the practicum: 1. Opportunity to communicate with students from other departments are limited during the practicum term, and continuous efforts for realizing further communications after the practicum are required. 2. Learning opportunities and the achievement of learning objectives differed in some learning items due to the feature of facilities, and compensative efforts should be discussed in the report session after the practicum.
著者
坂田 悍教 佐藤 雄二 藤縄 理 新藤 良枝 須田 桃子 上原 美子 北沢 潤 岩田 真一 山本 眞由美
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-8, 2004
被引用文献数
1

中学1年生、男子91名、女子88名、179名を対象に運動、食生活、日常生活習慣と骨量についての関連を検討した。骨量の測定は、超音波骨量測定装置を使用、右踵骨で測定した。骨量は、女子が男子に比較して有意に高値を示した。男子の骨量は身長と正の相関示したが、女子では骨量と体格の間に相関は認められなかった。骨量と食生活習慣では、女子の肉類摂取で影響が見られたが、牛乳、魚、生野菜、豆類、スナック菓子、炭酸飲料、コ-ヒ-類の摂取状況の相違による骨量の差は男女とも見出せなかった。女子において運動の有無、徒歩通学時間は骨量への影響因子となったが、男子では関連を示さなかった。中学1年(12歳)の骨量は、多様性がみられ、発育を加味した縦断的な調査・研究が必要と考えられた。
著者
高畑 隆
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.117-123, 2001

現在の障害者施策は、共生による'つながり'の社会に向け、障害のある人も障害のない人も同等に生活できる社会を目標としている。ここでは、エンパワメントとエンパワメントを促進するシステムとしての社会福祉法を考える。エンパワメント促進には、障害の構造的な理解が必要である。それにより専門職だけではなく障害のある人も、より良く障害を理解することができる。そして、専門職は、本人が主体者として自らの人生を歩めるよう、本人の様々な権利を意識した関わりが必要である。自立生活支援は、セルフヘルプグループと権利擁護の視点が基本である。セルフヘルプグループは、共生の社会づくり、社会連帯へのネットワークづくりである。権利擁護は、権利擁護システム、成年後見制度などでエンパワメントを支援する。これには、本人中心の人生支援、本人中心の'つながり'づくりの支援、本人の組織づくり、行政計画への本人参加がある。
著者
森 正樹
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.125-131, 2011

【目的】発達障害生徒の教育的支援に必要とされる、学校と家庭間の関係構築に着目し、これを促進する教育相談の視座、及び技法の提言を目的とした。【方法】専門相談機関に来所した発達障害生徒の保護者の相談記録中の、学校や教師との関係に関する相談内容に着目し、エピソード等を収集・解釈した。【結果】教育現場における、家庭から提供された情報の活用、生徒のニーズへの着目と共通理解、特別支援への主体的実践等、これら諸点が教師と保護者間の関係構築に関与していた。【考察】教育相談において、(1)保護者が提供する情報の尊重と有効活用、(2)背景情報と文脈情報の重視、(3)意図・目的を確認し合う相互の対話、(4)相談の目的確認、(5)保護者の要望への適切な対応・応答、(6)教師自身のコミュニケーションの省察、(7)生涯発達支援における情報の価値への気付き、(8)支援仮説の言語化、(9)特別なニーズを有する生徒の支援を、教師の職業的アイデンティティーの中に位置付けることの重要性を提言した。
著者
常盤 文枝 鈴木 玲子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.137-142, 2010
被引用文献数
1

チーム基盤型学習法(TBL)とは、Michelesenによって発想、確立された学習方法である。米国では、医学、看護学、運動学、獣医学などの多くの医療専門職の教育プログラムに活用されている。TBLの基本は、学習者の「責任性」と「判断力」にあり、少人数グループで作業をすすめる過程で、学習集団をグループからチームへと進化させる方法である。TBLは協同学習の1つと考えられるが、その持ち味は、大人数の授業で、一人の教員が、1つのセッションを舵取りし、授業中に学生を能動化させることができる点にある。TBLは、予習、準備確認、応用問題の3つのフェーズごとに進められ、その過程で学生が取り組むやすいように様々な仕掛けが施されている。今回、TBLを活用した授業を試みた。その結果、学生の受け止めは肯定的で、主体的に授業に取り組む様子が伺えた。今後も、より能動的な授業展開ができるよう教育プログラムを検討したい。