著者
鈴木 眞理子
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.31-41, 2005-03

In the previous article (Suzuki, 2003), there introduced two high school graduates who had no knowledge on welfare, but started acquiring professional skill and knowledge enthusiastically through their work. We followed how they become qualified as social workers. They learned to gain professional knowledge and more they leveled up more they had incentive. After they became qualified, they still grew up as well-experienced workers. In present two cases, they start from actual workers without much professional knowledge but eventually they acquire national qualification as social workers. That gives them self esteem and high level of profession. In other words, qualification has more meaning than only gaining skill and knowledge. It gives satisfaction to the ones who acquired the qualification and that leads to their self esteem on their work. This has a good effect on the quality of their work because more confident social workers become, they serve better. There is also a fact that qualification changes nothing in what they can do compared with other qualification which legally allows the profession such as lawyers and doctors. However, qualified social workers tend to be proud of their work and skill. The workers brush up their skill and as a result they are accepted as skilled and experienced workers. There are also qualified social workers who graduated from non-welfare department, but happened to start working as social workers. Although they are similar to the workers in previos article, some differences are discussed.
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.51-61, 2006

ライフコース研究は家族社会学に応用され、親の価値観、親世代の生活状況が子ども世代に与える影響を考察するのに大きく貢献した。本論文は、専門職であるソーシャルワーカーの力量形成のキャリア発展の要素をライフヒストリーの中に見出す研究の一部として、親世代の影響についてソーシャルワーカーを志した娘世代3名のキャリア発達の中に考察した。いずれも父親は職人、自営業、工場労働者で、学歴も義務教育か高卒であるが、本人の成長と並行して父親も家作のある自営業者、工場長、管理職と出世した。父親のキャリアアップと生活向上を可能にしたのは、日本の経済発展であると同時に、両親の真面目さと努力、才覚である。この家庭状況が3名の原動力になっている。また日本の高等教育の発展が、娘世代に親たちの学歴より上の高等教育を可能にした。娘世代は女性の新たな活躍の場として福祉現場を選び、肉体労働をこなし、人間模様を体験した上で、組織のリーダーや管理職としてキャリアアップした。これは日本の福祉時代の到来と施設やサービス事業所の拡充が追い風になっている。同時に3人は国家資格や専門資格の取得と、米国留学、大学院進学、各種研修講師として、質としてもキャリアアップしているが、これを可能にしたのは、本人の強い向上心と独立心である。父親たちの経済的地位の向上を日本経済が後押ししたのと同様に、娘たちの専門職としてのポスト確保、地位向上は福祉サービスの発展、介護事業拡大が可能にした。社会サービスである福祉は経済的発展の上になりたち、個人の世代的キャリア発展も時代の影響が大きいことが証明された。
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-33, 2007

【目的】女性ソーシャルワーカーのキャリア発達がどのように変化していくか、ライフヒストリーの中から分析考察する。家庭環境や結婚・子育てが職業選択から転職や継続にどのような影響を与えているか、個性がソーシャルワーカーのキャリアにいかに関係するかを比較検証する。【方法】地域、分野、出生の異なる50歳代、3人のベテラン女性ソーシャルワーカーにインタビューを行い、ライフヒストリーを起こし、キャリア発達と家族の特徴、本人の個性やパーソナリテイとの関係を分析した。【結果】1970年前後に就職した世代は、ソーシャルワーカーは一般的職業ではなく、その選択に家族環境が大きく影響している。1人は障害のある弟を庇う正義感と父親への反発から福祉の仕事をライフワークとして目指した。もう一人は英語力を生かして国際的な仕事で転職を繰り返すが、親や弟の介護をきっかけに生涯学習として福祉に出会い、帰郷し地域包括支援センターの相談員となった。3人目は家庭環境が社会事業の中にあり、一族が必要とした看護師となり、法人発展の過程でソーシャルワーカーとなり特養の施設長となった。【考察】3人のうち2人の職業選択において、障害児の兄弟と育ち、両親が世話をすることが社会福祉やソーシャルワーカーに向わせたことが推察される。他の一人は社会事業を興した親のもとで、自然に家業を継ぐように福祉に向った。3人の職業観、結婚と家庭環境、性格によって、一相談員、特別養護老人ホームの施設長、NPOの介護事業経営者と、それぞれの最終ポストは異なった。【結論】ソーシャルワーカーという職業選択は家庭環境に大いに影響されているが、キャリア発展の結果は、本人のパーソナリテイによって大きく影響されることが結論づけられた。
著者
鈴木 眞理子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-41, 2008

中途参入の女性ソーシャルワーカーのキャリア発展についてライフヒストリーから分析考察する。福祉に縁のない家庭環境出身の3人の女性が、就職、結婚、子育ての経験後、再社会参加として社会福祉を選択し、ソーシャルワーカーとしての地位を確立する経緯を追った。【目的】(1)育った家庭環境や子育て、前職の経験がどのような影響を与えているか、(2)共に早世した父親の存在が娘の生き方とキャリアにいかに影響を与えたか、(2)個性が、キャリア発展やポスト獲得にどのように影響を及ぼしているかを検証する。【方法】50歳前後の3人の女性ソーシャルワーカーのインタビューによるライフヒストリーを起こし、表に整理しながら、過去のキャリアと現在の福祉分野(ソーシャルワーカー)でのキャリアを個人的動機、家族の特徴、特に父親の与えた影響、本人のパーソナリテイとの関係に注目し分析考察した。【結果】G子は地元社協の立ち上げ職員の欠員補充として就職した。H子は子育て中、多様な職業経験の後、キャリア蓄積のため社会福祉士の資格取得を目指した。病院就職後も外で多彩な活動を繰り広げた。I子は父の死という不条理への怒りから商社を退職、多様なフリーター経験をした後、安定とやりがいから資格に結びつく福祉系大学へ進学した。【考察】3人のキャリア発展のプロセスは異なるが、早世した父親の影響がキャリア発展の節々に強く表れていた。G子は結婚相手と子育てを生きがいにする家庭中心主義、また地味に裏方として組織を支える真面目さがあった。H子は先見の明のある経営者、世間で役職をこなす名士としての父親像を理想として、華のある注目されるソーシャルワーカーとして多くの役職につき、三障害を対象にする画期的な相談支援センター長となって自分の理想に近づいた。I子は進学か就職かで大喧嘩の直後に父親を失い、喪失感の影響は大きかった。父親の死の意味を自分のキャリア発展に吸収するまで8年間の時間がかかったが、自分に適した福祉サービスの施設経営者として父親の夢を実現した。【結論】3人のキャリア発展のゴールは「内助の功型」「スター型」「経営者型」とそれぞれの個人のパーソナリテイを色濃く反映している。その背景には娘に大きな愛情と期待をかけ、無念にも早世した父の思い、それに応えた娘の思慕があった。3人のソーシャルワーカーとしてのキャリアコースには、それぞれの個性と同時に、育った家庭環境、父親の娘への期待が大きく反映されていた。