著者
島薗 進
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.19-27, 2005-09-19
被引用文献数
2

医学が治療という任務を超えて、心身の能力を増進させたり、性格を変化させたりすることは許されるのか。許されるとしても限度があるとすれば、どのような限度だろうか。増進的介入をめぐるこうした論議の中で重要な意義をもつものに、軽度のうつ気分の改善に効果があるプロザックなどのSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)をめぐるものがある。気分操作という面でSSRIが切り開いた新たな医薬の機能を解説し、心理療法と対比しつつその使用を巧みに弁護した書物にピーター・クレイマーの『プロザックに耳を傾ける』がある。その弁論とレオン・カスが座長を務めるアメリカの大統領諮問生命倫理委員会の批判論を対比し、増進的介入の限度を論じる際の根拠となる生命の価値の概念について考察する。自律ではなく、痛みを免れられず、また与えられたものによってこそ生きる人間の条件を知り、受け入れることの価値について論じる。

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こんな論文どうですか? 増進的介入と生命の価値 : 気分操作を例として(島薗 進),2005 https://t.co/eX0rcW5QVt 医学が治療という任務を超えて、心身の能力を増進さ…
【増進的介入と生命の価値 : 気分操作を例として - 島薗進: http://t.co/KxSgmspT 】SSRI が出た当時は「医学が心身の能力を増進させたり、性格を変化させたりすることは許されるのか」という問題の立て方が成立してた。なんか物凄い薬だと思われていた事がわかる。

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