- 著者
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安井 寿枝
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.2, pp.29-44, 2008-04-01
谷崎潤一郎『細雪』の中心人物である蒔岡家四姉妹の使用する、尊敬語について以下のことを論述する。四姉妹が使用する尊敬語には、関西方言であるものと、標準語であるものが存在する。中でも姉妹が最も使用している尊敬語は、はる敬語であり、姉妹によって接続に差があるものが見られた。五段動詞に注目すると、次女の幸子は、aはる型を多く使用し、末の妹である妙子は、やはる型の拗音を多く使用している。また、一段動詞では、姉妹に共通して「出る」「見る」のような語幹部分が一音節のものは、やはる型を使用し、「できる」「見せる」のような語幹部分が二音節のものは、i/eはる型を使用するという使い分けが見られた。その他、関西方言の尊敬語では、船場言葉としての「なさる」が存在している。その使用は船場言葉としては動詞+なさる型であり、標準語としては本動詞「する」の敬意型であった。標準語の尊敬語では、れる/られる型・お〜になる型・御〜型・いらっしゃる型・特定単語型が存在する。特に、れる/られる型では、不特定の人物に対する使用が確認された。このような使用は従来、はる敬語に限って見られる特徴とされている。